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<東京>羽生さんら輩出 伝説の道場 八王子将棋ク、閉所へ

11/6(火) 8:37配信

毎日新聞

 羽生善治竜王(48)ら多くのスター棋士が巣立った「八王子将棋クラブ」(東京都八王子市横山町)が、今年いっぱいで閉じる。経営する八木下征男さん(75)の体調がすぐれないうえ、入居ビルの改修工事が重なったためだ。羽生さんの「原点」として知られ、13人のプロ棋士が育った伝説の道場は、42年の歴史にピリオドを打つ。

 大手電機メーカーの技術系社員だった八木下さんが退職したのは30歳のころ。「体力的にきつく、つぶれかねない。それより、大好きな将棋を仕事にしたい」と思ったからだ。

 電気工事で資金を作り1977年、故郷の八王子市に将棋クラブを開いた。34歳だった。その翌年、「母親に手を引かれ、もじもじしながらドアを入ってきた」のが、小学2年の羽生さんだった。当時、知っていたのは駒の動かし方だけだったが、熱心で毎週末やってきた。

 「頭の回転が速く、瞬時に指し手がひらめいていた」。八木下さんが独特の輝きを感じた少年は小学6年で、日本将棋連盟のプロ養成機関「奨励会」に入会。中学3年でプロ入りを果たす。史上初の「7冠独占」を達成した96年ごろは将棋人気の高まりもあって、週末のクラブは立ち見が出る盛況だった。

 羽生さんの「出身道場」として各地から子どもが通ってくるようになり、阿久津主悦八段ら多くのプロを輩出。羽生さんら出身棋士がよく指導に訪れた。

 一方、八木下さんは8年前から糖尿病で人工透析を受けるようになった。潮時かと感じ始めていた昨年10月。羽生さんに憧れ、クラブの門をたたいた中村太地六段(当時)が、王座戦で羽生さんを破って初めてタイトルをつかむ。今年2月には、「永世7冠」を達成した羽生さんが棋界初の国民栄誉賞に輝き、「節目だと感じた」。

 2カ月後、羽生さんが子どもを指導するためクラブを訪れ、近くのそば店で羽生さんと食事した際、「年内で」と明かした。羽生さんは「長い間、本当にお疲れさまでした」とねぎらったという。

 「羽生さんとの出会いで長く続けられ、多くの子どもが目を輝かせて夢中で将棋を吸収していった。共に時間を過ごし、成長を見ることができたのは、かけがえのない宝です」

 八木下さんはそう話している。【野倉恵】

最終更新:11/6(火) 9:53
毎日新聞

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