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新興国の債務累増という「炭鉱のカナリア」

11/6(火) 13:00配信

ニュースソクラ

世界経済の危険な兆候

 2009年の世界的金融危機を契機に世界のマネーはゼロ金利、量的緩和政策で金利がほとんど付かなくなった先進国から新興国に向かった。

 先進国の景気回復と量的緩和の終焉・金利の上昇は、借り入れ拡大により戦線が広がり過ぎた新興国への脅威となっている。

 新興国は世界的金融危機から比較的早期に立ち直った。中国の爆発的な成長が新興国の資源輸出の増加に結び付いたこととFRB、ECB、日銀など先進国による量的緩和が各国の債券利回りを低下させて、投資家が高いリターンを期待できる新興国への投資に資金を移動させたためである。従って、新興国の中には制御が不可能なまでに信用膨張が膨らんだ国もある。

 トルコの通貨危機の根本的な原因は、大幅な経常収支赤字とそのファイナンスを海外からの資本流入に仰ぐ、外貨準備が不充分、という1997年のアジア通貨危機と同じ類いのものである。市場の信用喪失が、大幅なリラ切下げ、対外借り入れの大きい民間企業のデフォルト懸念、570億ドルのIMF融資を受けるための緊縮政策導入をもたらした。

 トルコの経済規模では、それだけでグローバルな金融危機につながることはない。しかし、アジア通貨危機のように同じような体質を抱える新興国に伝播していく可能性は大きい。

 もちろん、新興国の中にはアジア通貨危機の経験などから外貨建ての対外借り入れから自国通貨建て債券市場の育成を通じる資金調達や輸出促進による外貨準備の積み上げなどの対策を講じてきた。

 しかし、それでもBISなどの調査によれば、主要新興国の非金融民間企業では、米ドル建て債務が年率10%のペースで増えてきた。これがブラジル、メキシコでは石油公社や建設業を中心に年率20%、南アフリカ、インドネシア、アルゼンチンでは年率30%以上の急増をみている。

 海外からの借り入れは、これら新興国の大幅な経常収支の赤字のファイナンスにつながってきた。これら新興国は言い換えれば、生産以上の消費を行うことができた。しかし、米国経済が年率4%の実質成長(第二四半期)と好調を持続する中でFRBが2015年以来2%の利上げに踏み切り、資本は米国に大量流入してドル高になっている(日本は唯一と言っていいくらい、大幅なドル高になっていない国なので実感に乏しいが…)。

 この結果、新興国の通貨は下落する、さらに貿易量は伸び悩む、為替市場でも一段のドル高が懸念される状況になっている。

 こうした中でドル建て債務の多い新興国の民間企業(優良企業が多い)では、FRBの利上げ継続とドル高により、債務返済負担が急速に高まっていると思われる。このため、これら企業では債権者からの圧力も加わって経常経費の削減、新規投資の抑制を強いられることになろう。

 いずれ、先進国でも現地通貨の減価を通じる直接投資の評価損計上や輸出の減少を通じて、その影響が感じられることになろう。

 新興国の中でも、中国の成長が減速する場合の世界経済に及ぼす影響は甚大である。世界的な金融危機の際には、中国の輸出市場である日米欧の急速な景気後退に加えて、それを通じる自国での失業増大と政治的な不安定性を回避するために4兆元の景気対策が取られた。

 地方政府、国営企業を主体とする投資増大を柱とする、この景気対策はシャドーバンキングなどを通じる借り入れによって賄われた。世界的な金融危機が収束に向かっても、中国ではシャドーバンキングを通じる信用膨張が続いた。この結果、中国の総債務/GDP比は2009年の175 %からいまでは300%にまで膨れ上がっている。

 問題をさらに悪くしているのは、その大量の資金が鉄鋼、石炭などの設備投資や不動産の過剰開発など生産性の低い部門に向かったことである。生産性の低い部門では債務の償還能力も悪化しているはずだ。これが資本主義経済下であれば、金融機関も期日返済を要求するのでパニックになるところであるが、中国では資本流出規制や国営銀行等に対する内面指導を通じて持ちこたえている。

 しかし、中国が6%成長を維持できなくなれば、自転車が止まれば転倒するように、不良資産問題が現出しよう。それを習近平政権は最も恐れているように思われる。またそうなった場合の世界経済の影響は深刻なものとなろう。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:11/6(火) 13:00
ニュースソクラ

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