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「地域の宝」破損の恐れも…佐野常民の壁画移設、心配する住民 佐賀

11/6(火) 9:54配信

西日本新聞

 「佐賀の七賢人」の一人、佐野常民の功績を伝える有田焼の陶板壁画の行方に、佐野の出身地である佐賀市川副町早津江の人たちが気をもんでいる。壁画は地元の中川副公民館に設置されているが、老朽化で施設の移転新築が決定。壁画を損なうことなく新公民館に移設できるか、まだはっきりしていないからだ。

【写真】博愛社の救護所を描いた陶板壁画

 現公民館は1971年に完成。公民館としてだけでなく、佐賀藩海軍の創設に尽力し、日本赤十字社の前身となる博愛社を創設した佐野の顕彰を目的とした記念館の役割も担っていた。

 館内でゆかりの史料を展示するほか、2種の巨大な陶板壁画で佐野の業績を紹介。「佐賀藩三重津海軍所俯瞰(ふかん)の図」(縦2メートル45センチ、横6メートル90センチ)は、佐野が責任者を務め、遺構が世界文化遺産となった三重津海軍所に国内初の実用蒸気船「凌風丸」などの船が集まり、人々が作業している様子を再現している。「西南之役における博愛社の救護所の図」(縦2メートル45センチ、横4メートル60センチ)は、西南戦争の際に博愛社が救護所を設け、負傷兵を分け隔てなく助ける様子を描いている。

 2004年、早津江に佐野常民記念館が新設された際、公民館にあった史料約100点は記念館に移されたが、陶板壁画は公民館に残った。現在は自由に見学でき、壁画目当てに多くの人が県内外から訪れるという。「『こんな素晴らしいものがある公民館はほかにはない』とみんな驚く。地域にとっての大切な財産だ」と、公民館の木原昇館長(75)は語る。

 市公民館支援課によると、新公民館は記念館そばに整備される予定。来年度に着工し、20年度までの完成を目指している。

 地元住民らでつくる建設検討委員会は9月、陶板壁画を新公民館に移設することなどを市に求める要望書を提出した。一方、壁画はデリケートで取り外すと割れる可能性があり、市は設置した業者とともに移設の技術的可能性や費用について調査中。「委員会の要望は受け止めているが、まだ無事に壁画を剥がして移せるか判断できない状態」(同課)としている。

 地元のまちづくり協議会メンバーの江頭俊雄さん(67)も行方を心配する1人。記念館の歴史ガイドボランティアも務めており、よく観光客に陶板壁画を案内するといい、「歴史のある地域を象徴するせっかくの宝物を壊してはいけない。陶板壁画が新公民館にあれば、観光客が記念館付近を散策する動機づけにもなる」と訴えている。

西日本新聞社

最終更新:11/6(火) 9:54
西日本新聞

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