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【記者殺害事件】ムハンマド皇太子の進退で変わる中東の勢力図――トルコ、イラン、イスラエル、アメリカ…

11/7(水) 12:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

サウジアラビア人の著名なジャーナリストのジャマル・カショギ氏がイスタンブールのサウジ総領事館で殺害された事件で、サウジの実質的な支配者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子(32)の“今後”に世界の注目が集まっている。

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事件関与への疑惑が深まってもそのまま権力を保持し、国王になるのか、または排除されるのか。どちらの場合も、サウジと中東は大きなリスクを抱え込むことになり、米トランプ大統領の中東政策にも影響する。

注目集めるムハンマド皇太子の進退

欧米のメディアには、事件を受けて王族内部でムハンマド皇太子に代わる王位継承者について議論が始まった、という情報もあれば、王族の間にはサウド家の分裂を避けるために皇太子が国王になるしかないという意見が強いとの報道もある。

さらにアメリカでは、トランプ大統領はムハンマド皇太子が権力にとどまることを望んでいるが、事件後にサウジを訪れたポンぺオ国務長官は皇太子を交代させるべきだと考えている、と言われている。トランプ大統領が皇太子をかばうのは、皇太子が対イラン強硬派であることと、大統領の娘イバンカ氏の夫でユダヤ系のクシュナー大統領上級顧問が皇太子と親密で、水面下でイスラエルとの協力関係を進めている――などの理由だ。

ムハンマド皇太子が生き延びるとすれば、王族内と国内の批判を抑え込まねばならず、政府批判派のカショギ氏を殺害した強硬手法が、さらに進むことになる。逆に、ムハンマド皇太子が排除されるとすれば、代わりに権力を担う人物は調整型の人材とならざるをえないだろう。カショギ氏が唱えた民主化や言論の自由を進めることで、サウジの長期的な安定を探る道もある。この事件は、皇太子が生き残って強権化か、排除されて民主化か、という選択になろうが、共にリスクを伴う。

伝統を無視する急進改革

サウジアラビアの王族であるサウド家では伝統的に2つのコンセンサスが重視されてきた。一つは王族のコンセンサスであり、2つ目は宗教界のコンセンサスである。

年功序列を基本に、王族の話し合いで王位をつなげてきたサウド家で、サルマン国王が息子のムハンマド王子を副皇太子に任命することについては年長の王族から反対の声があがったとされる。匿名の王族によるサルマン国王とムハンマド副皇太子を批判し、追い落としを呼びかける文書が出回ったことは欧米のメディアでも取り上げられた。その後、ムハンマド・ナイフ皇太子を解任してムハンマド・サルマン副皇太子が皇太子に就任したことで、王族内の反発があることも予想される。

もう一つの宗教者のコンセンサスについては、女性の運転解禁や女性のスポーツ観戦の解禁、映画館の運営の解禁など、ムハンマド皇太子が主導して矢継ぎ早に行う改革について、サウジの主流である超保守的な宗教界は沈黙している。一方で人気のある改革派の宗教者が次々と拘束され、保守派を抑え込むだけでなく、改革派も抑え、皇太子が宗教界の影響力を排除しようとしていることがうかがわれる。

ムハンマド皇太子の手法は、サウジで重視された王族と宗教界の伝統的なコンセンサスをかなぐり捨てる破天荒なものである。反対意見を抑え込むために、宗教者やジャーナリスト、市民活動家を拘束し、弾圧した。カショギ氏殺害事件はその流れの中にある。皇太子が今回の危機でも反対意見を抑え込んで生き残れば、開明的な社会改革、経済改革をとりつつも、国内では秘密警察を使って恐怖政治で支配するという、1970年前後にイラクのサダム・フセインやリビアのカダフィが始めた個人独裁化の道を進むことになるだろう。

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最終更新:11/7(水) 12:10
BUSINESS INSIDER JAPAN

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