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「わが経営」を語る 小堀秀毅旭化成社長(2)

11/7(水) 15:00配信

ニュースソクラ

社内で「異業種交流」をやっています

 ――小堀社長は入社して、まずエレクトロニクス関係の仕事に就いたのですか。(聞き手は経済ジャーナリスト、森一夫)

 最初はケミカルです。ポリマー(重合体)の分野で、新規の樹脂の事業化を6、7年やりました。次に新規事業でLSI(大規模集積回路)、エレクトロニクスをやるというので、そちらに移りました。

 割と新しい事業をやってきました。繊維とか従来の旭化成で主流だった石油化学とかは、どっぷりつかるまではやっていません。

 ――合繊、石化が主流だった旭化成が1980年代に、LSI事業に進出するというのは奇異に感じましたね。

 当時、これからの産業のコメはLSIだといわれて、旭化成だけでなく、大手鉄鋼メーカーさんも全て進出しました。新日本製鉄(現新日鉄住金)、日本鋼管(現JFEホールディングス)、川崎製鉄(同)、神戸製鋼所など、みな半導体事業に出ました。

 もともと日立製作所、NEC、東芝など電機メーカーさんが、自社の製品の競争力を高めるために半導体をやり、スケールメリットを出すために外販をしていたわけです。その中に、事業の多角化として大手鉄鋼メーカーさんが入ったのですが、今はどこもやっていません。

 ――旭化成のLSI事業は今どうなっていますか。

 やっていますよ。もともとメモリーとかプロセス系ではなくて、設計とアナログ系を指向して、今はセンサー関連のデバイスに注力しています。

 だから時流がIoT(物のインターネット)などになってくると、センサーは必須なので、旭化成グループのマテリアルという事業領域では、非常に貴重な存在になっています。

 繊維やケミカル関係の会社で、こういうエレクトロニクス部品を持っている会社は無いですからね。例えばヨーロッパの巨大な化学メーカーに、化学製品を持って行っても相手にされませんが、センサーとプラスチックを一体にした提案をしますと、オオッと関心を持ってくれます。

  ――一方、戦前からキュプラ繊維の「ベンベルグ」の事業を続けて、今ではメーカーは世界で旭化成1社だけだとか。あれは背広の裏地にいいですね。

 現場が用途開発に取り組んで、背広の裏地より今伸びているのはインドの民族衣装のサリーです。シルクに替わる高級素材として認められています。

 またこれは国連開発計画(UNDP)の要請に参画している事業です。原料のコットンリンター(綿の実のうぶ毛)はインドで生産され、我々が輸入してベンベルグをつくり、向こうで織って製品にします。

 ファッション性が高い素材なので、それを生かす技術をインドの大学などで教えたり、コットンリンターを採る機械を原料メーカーに貸与したりして、生産から消費までサポートしています。

 まさに社会貢献で、国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)の一環となる活動をやっているんです。

 ――ベンベルグは儲かっているそうですが、競合メーカーは現れないのですか。

 おかげさまで儲かっています。新たにやろうとすると、相当な設備とノウハウが要ります。我々も第2工場を建てたいのですが、蒸気や水などをかなり使いますから、一から工場をつくるのは大変なのではないでしょうか。

 皆さん、むしろ新しい物に目が向いて、炭素繊維などに出て、ベンベルグには出てこようとしません。(笑)

 ――旭化成は炭素繊維を止めましたね。

 あれは三菱レイヨンさん(現三菱ケミカル)に譲りました。

 ――見切る事業もあるわけですね。

 事業を広げることも沢山やっていますが、結構、切り離した事業もありますよ。特にリーマンショックからですね。我々はアルコール飲料つまりお酒もやっていたんです。それから冷凍食品、塩関係、調味料の「旭味」なども、切り離しました。

 昔は多角化として、生活に関わるいろんなものに挑戦しましたけどね。バブルが弾けて以降も、だいぶ絞り込んできましたが、それでも外から見たら、まだ少し多いように見えるかもしれません。

 ――小堀社長のキャリアが象徴するように、旭化成はこの30年、40年で随分変わりました。この変化をどう受け止めていますか。

 旭化成の歴史そのものです。1つの業種で専業メーカーとしてずっとやってこられた企業もあるでしょうが、旭化成のDNAはやはり新しい事業にチャレンジすることです。

 事業のポートフォリオを変革しながら企業価値の向上をはかり、事業を通じて社会に貢献する。それが脈々とつながってきた歴史ではないでしょうか。これを今後も続け、私の役割はそのバトンをつないでいくことだと思っています。

 ――事業によって主流、傍流という意識は無いのですか。

 そういう考え方は無いですね。みんな自分が主流になろうと思っていますから。社内でよく言っているのは、お互いに理解し尊重しそれぞれの事業から学び合おうと。

 これは極めて重要で、そのために欠かせないのは密接なコミュニケーションです。旭化成の特徴として節度ある飲みニケーションがありますが。(笑)

 旭化成は事業領域が3つあって、社内でいわば異業種交流を自然にやっているようなものです。世の中ではよく異業種交流をして勉強しましょうと言っていますが、当社には社内に異業種交流をできる場が一杯あるのです。

 他の事業のやり方、特徴を理解して、そこから何が得られるのか、自分たちの事業にどう生かせるのかを学ぶ。これがグループの中でできるのが、我々の大きな特徴だと思います。

(次号に続く)

最終更新:11/7(水) 15:00
ニュースソクラ

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