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支え合いの現場から 地域包括ケアの行方  訪問介護の模索(上)

11/7(水) 19:18配信

カナロコ by 神奈川新聞

◆ 重要性増す「見守り的援助」

 介護保険サービスで、在宅の要介護者を支える柱である訪問介護の模索が続いている。2018年度介護報酬改定を受け、厚生労働省は昨年度末、自立支援を強化するため、訪問介護でのサービス行為のあり方を示した通知「老計第10号」を改正。「身体介護」に位置付けられている「自立生活支援のための見守り的援助」を、「自立生活支援・重度化防止のための見守り的援助」に変更するとともに、具体的事例を増やし明確化した。ところが、この見守り的援助の意義や改正の意図が、実際の現場で十分に理解されているとは限らないという。訪問介護の課題を探った。 

 横浜市神奈川区で9月、市訪問介護連絡協議会と市介護支援専門員連絡協議会による合同研修が約250人が参加し開かれた。テーマは老計第10号の改正。実際の事例を基に、訪問介護の失敗例、成功例を分析する寸劇が行われた。

 失敗例は、家事は自力でこなせるものの、認知症の症状が見られる独居の女性高齢者の事例だった。長女と契約した介護支援専門員(ケアマネジャー)は、住み慣れた自宅で少しでも長く暮らし続けられるように、自立生活支援の観点から「一緒に家事をする」(身体介護の見守り的援助)というケアプランを組んだ。

 ところが訪問介護員(ヘルパー)が訪問すると、女性はソファに横になったまま、「疲れたから」と言って、なかなか一緒に家事をしてくれない。料理上手のヘルパーが仕方なく一人で料理を作ったところ、自分で作るよりおいしいということで、料理も全て頼むようになってしまった。

 これを知った長女は、「全部やってくれるなら生活援助ではないか。それなら料金の安い生活援助にしてほしい」とケアマネジャーに申し出て、ケアマネジャーもそれに同意しケアプランを変更してしまった。

 訪問介護事業所のサービス提供責任者(サ責)はケアマネジャーの指示に従い、ヘルパーは黙々と家事をこなすことに。家事を人任せにした女性はあっという間に認知症が進行し、施設入所となってしまった。ヘルパーが入ったことが在宅生活を短くしたとも考えられる事例だった。

 寸劇では、見守り的援助の意義を十分理解できず、料金だけを気にした家族、家族の要求に唯々諾々と従うケアマネジャー、ケアマネジャーの指示に何の疑問も示さないサ責、得意な家事を頑張ってしまうヘルパーの様子などが、コミカルに描写された。

 事例を解説した横浜市福祉サービス協会神奈川介護事務所の新井仁子所長は「ケアプランやサービスはニーズ優先アプローチが原則。この事例では、当初の自立支援というニーズがどこかに行ってしまい、高い・安いというお金優先のアプローチ、サービス優先のアプローチになってしまった」と指摘した。

 訪問介護サービスは、大きな区分として、身体介護と生活援助に分かれる。身体介護は、おむつ交換、車いすへの移乗介助、入浴介助、食事介助など、ヘルパーが利用者の身体に直接触れて行うサービスなどだ。要介護の人が在宅生活を続ける基盤となる。介護の専門職であるヘルパーの専門性が発揮され、介護報酬も高い。

 一方、生活援助は、掃除や洗濯、料理など日常生活の援助で、本人、家族が行うことが困難な場合にヘルパーが行う。本当に本人、家族が行えないのか、援助の範囲などは吟味が必要だ。掃除業者、家政婦などで代行できる可能性もあり、介護保険サービスとして公的な財源で行うべきかも十分に検討されなくてはならない。

 そして、今回の通知改正のポイントとして重要性が強調され、寸劇でも取り上げられたのが、身体介護に位置付けられている「見守り的援助」だ。これは、身体に直接触れるわけではないが、常時介助できる状態で行う見守りだ。

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