ここから本文です

現実の格闘技大会「RIZIN」で突如組み込まれたe-Sports(前編)ー『鉄拳7』日韓決戦!その行方は…

11/8(木) 19:00配信

Game Spark

2000年代に人気を博したMMA(総合格闘技の名称、Mixed Martial Artsの略称)イベント「PRIDE」の系譜である「RIZIN.13」が2018年9月30日、さいたまスーパーアリーナで開催されました。

大きな写真で詳しく見る

今回は、同イベントにて組まれたe-Sportsイベント、『鉄拳7』の日韓戦の様子をお届けします。

■昔から格闘技イベントはメインと別の格闘技の試合も組まれたが、遂にe-Sportsにまで達した
今回メインイベントを飾ったのは、那須川天心選手VS堀口恭司選手。弱冠20歳の那須川天心選手は、高校在学中に無敗のムエタイチャンピオンをKOし、そのまま期末テストに向かったエピソードが人々の注目を浴びました。

対して堀口恭司選手は、9月に急逝した山本“KID”徳郁選手の弟子であり、世界最大のMMA団体「UFC」のフライ級で王者を争った経験を持ち、識者が「日本人MMAファイターの歴史上最強の選手」とまで評するほどの実力者です。

※画像はRIZIN公式サイトより 
「キックボクシングvsMMAそれぞれの現代最高の選手同士による異種格闘技戦」がメインを務める一方で、もうひとつ興味深い試みがありました。現実の格闘技イベントの中に虚構の格闘技を交錯させる試みです。それがe-Sportsイベント、『鉄拳7』の日韓戦です。

大晦日のイベントを代表に、日本の格闘技イベントはMMAルールやK-1ルールを中心としながら、スペシャルマッチアップとして別の格闘技の試合をイベントに含めることでバラエティー豊かにしてきた歴史があります。

今回の『鉄拳7』の日韓戦はそれと同じ形で「RIZIN.13」の第10試合として組まれていました。


超満員の観客が詰めかけた。
筆者が開場待ちのファンに今回のe-Sportsイベントに関して簡単なインタビューを行ったところ、「正直、今日まで知らなかった」、「格闘技もe-Sportsも好きだけど、やはり別々に分けるべきだと思う」、「昔少し『鉄拳』はやったことがあった」などの回答がありました。この日に『鉄拳7』の日韓戦が開催されるという公式発表が、開催9日前の9月21日のTGS2018で行われていたこともあり、格闘技ファンには認知度が低かったという側面もありそうです。

■台風の影響により、大注目の異種格闘技戦の後に始まったデジタルな格闘技

大会当日、台風24号の影響によってJR全線が20時より運行停止に。これを受けて主催者側は、「観客がメインを見て、電車が止まる20時前に安全に帰宅できるように」と試合順を大幅に変更し、「那須川天心vs堀口恭司」のメインカードを前倒しすると発表しました。

「那須川天心vs堀口恭司」の試合はまるで、少年誌で掲載されている格闘漫画の最中にいるようでした。堀口選手と那須川選手の、高速の打撃の攻防はほとんど目に見えなく、筆者は観客同様にそのハイレベルな試合に圧倒されていたのです。

『鉄拳7』の日韓戦は奇しくもこの一戦が終わった後に始まりました。メインを目当てにしていた観客は、台風で電車が止まる前に帰宅していきましたが、その後の試合を見届けようと残った観客は会場に設置されたモニターを注視していました。

■総合格闘技の選手たちと同じフォーマットで入場する『鉄拳7』選手たち

那須川選手と堀口選手が激闘を繰り広げたリングに機材が設置されていきました。こうしたe-Sportsならではの場面がありましたが、ここでは『鉄拳7』の選手は他の総合格闘技の選手とまったく同じように演出され、入場していたことが特徴的でした。


日本の格闘技イベントの特徴と言えば「煽りビデオ」と呼ばれる演出です。これは対戦する両者の背景を数分間のドキュメンタリーとして会場で放映することで、物語性を高め、試合を盛り上げる手法です。

今回『鉄拳7』の日韓戦でも、格闘技イベントではお馴染みの煽りビデオがしっかりと放映。「鉄拳7」のプロライセンスを持ったタケ。選手、ノビ選手、ノロマ選手らのファイトスタイルが描かれ、韓国勢は「鉄拳修羅の国」というフレーズでその強さが表現されていました。国内で格闘技を評する言葉で「修羅の国」とはあまりにも地力の強い選手が揃う国や団体を称するときによく使われるため、普段から格闘技を見ている筆者としてはその重みがよく伝わりました。


日韓両チームが大音量の入場曲とともにリングに向かうなど、総合格闘技の選手とまったく同じ演出が行われました。

アメリカの対戦格闘ゲーム大会のEVOでは、競技スポーツとしての柔道やレスリングの世界大会のように淡々とトーナメントが進行します。だからこそ高い競技性を見せていたともいえますが、今回の「RIZIN.13」のように、格闘技イベントをベースにしたe-Sportsの見せ方も多くの可能性を持っていると感じました。

e-Sportsでは既存のプロスポーツの見方をベースにした楽しませ方があると思います。たとえば『Overwatch League』は既存のNBAやメジャーリーグのような、地域密着型でチームを応援していく形式を取っているといいます。こちらはチーム制のFPSという組織的な構造と、地域密着型というのが繋がりやすいというもあるかもしれません。

その意味で個人vs個人である対戦格闘ゲームにおいては、現実の格闘技イベントの演出フォーマットは高い効果があると感じられました。特に近年では選手個々人のドキュメンタリーが活況であり、それぞれの物語性にフォーカスが当てられています。このような形で、選手それぞれの物語性の激突を見たいという需要はあるのではないでしょうか。

先日のMBSで放映された情熱大陸ではときど選手がフィーチャーされたことが話題になりましたし、格闘ゲーマーとしての生き方にフォーカスを当てたドキュメンタリー「リビングゲーム」では、ももち選手やウメハラ選手が話題になりました。煽りビデオはいわばこの要素を大会演出に持ち込んだ形だと筆者は考えました。

また、今回の日本チームは日本eスポーツ連合(以下、JeSU)によるプロライセンスを取得した選手たちで構成されています。これは「JeSU公認のプロプレイヤーはどのように活動しているのか?」を見るひとつのケースとも言えるでしょう。

次のページ:格闘技イベントで激突する日韓の『鉄拳』

■日本最強と韓国のレジェンドが激突した試合
煽りビデオを含めた試合模様は54:40から開始。
第1試合、日本からは「日本最強の盾」ことタケ。選手と「世界最強の女性キャラ使い」という韓国のシャネル選手の一戦が開始されます。タケ。選手が使用するのは三島一美。シャネル選手の使うアリサを迎え撃ちます。

主に観戦はモニターで確認する形であり、花道に設置されたメインモニターでは両選手の表情も映されています。台風を考慮して会場をあとにする観客がいるなか、会場の空気感も弛緩していたことは否めませんが、攻防や試合展開には歓声が上がっていました。

結果は、タケ。選手が制し、まず日本勢が1勝を上げます。

現実の格闘技ではディフェンシブなスタイルは判定までもつれ込む事があるのですが、『鉄拳7』ではディフェンシブなスタイルでもタイムアップ狙いというのはそう多くは起こり得ないため、エキサイティングな展開がある程度保証されています。ゆえに会場は好感のある反応になっていました。


現実の格闘技との試合と違う点と言えば、『鉄拳7』では会場で実況と解説の音声がそのまま流れることです。今回は、『鉄拳』シリーズのチーフプロデューサーを務める原田勝弘氏が解説として参加。総合格闘技の試合と比較すると実況と解説が大音量で放送されていることでいつもの格闘技とは一味違った趣となり、会場の空気感は一定の熱を保っていたと思います。


注目は第2試合でした。ここで韓国でレジェンドと言える実績を持つクダンス選手が登場。解説の原田氏によれば、初代『鉄拳』からプレイしている猛者であり、およそ20年にわたり活躍していたとのことです。兵役に就いたことで一時期は離れていましたが、『鉄拳7』で復帰。以降、その強さを発揮しています。その経歴はウメハラ選手を想起させるものがあります。クダンス選手はデビル仁を選択しました。


対するは「神速のアサルト」の異名を付けられたノビ選手。今年の「闘会議2018」の「鉄拳7~Break the world~」にて日本eスポーツ連合によるプロライセンス獲得マッチを制し、続く「鉄拳7 Final ~Royal Championship~」のトーナメントで優勝を果たし200万円を獲得。日本の『鉄拳7』シーンのトップと言える活躍をしています。ノビ選手はドラグノフを選択しました。

つまりは韓国のレジェンドvs日本の最強選手の一角という試合です。これこそ1対1の煽りビデオ付きで見たい試合でもありました。


試合は両者の実績ならではの一進一退の攻防を展開。両者が2ラウンドを取り合い、最終ラウンドで勝負が決まります。ここでクダンス選手の第1ラウンドのレイジアーツ(※体力が少なくなった時に一発逆転が狙えるシステム)の攻め手が布石となり、ノビ選手を翻弄し勝利。韓国勢が1勝を上げました。


日韓ともに1セットずつ取り合う好勝負となり、第3試合で決着をつける熱い展開になりました。最後に控えるのは韓国の二ー選手と日本のノロマ選手の一戦。韓国の二ー選手は「鉄拳ワールドツアー2017(TWT2017)”韓国ラウンド“KOREA MASTERS”」で優勝した実績を持つ新進気鋭の選手です。

二ー選手はスティーブを選択。対してノロマ選手が選んだのはデビル仁です。

両者が2ラウンドを取り、勝敗を決定することになる最後のラウンドも劇的な展開に。冒頭からノロマ選手が壁際で攻め続ける展開で決まるのかと思いきや、二ー選手は攻め手を読み切って反撃し、そのままノロマ選手を制して勝利。日韓戦は韓国勢の勝利で幕を閉じました。

■異色の大会を終えた、選手たちの心境

「不安がいっぱいだったんですけど、思ったよりも応援があって助かりました。」試合後のインタビューでノロマ選手は今回の試みをそう語りました。筆者もこれは同意であり、チャレンジングな試みだと思っていましたが、観客の反応は良かったと感じました。

また、既存の格闘技イベントの演出の中で試合をすることに関して、クダンス選手は「子供のころテレビで見ていた、K-1やPRIDEのようなイベントを間近で見られたことはすごく嬉しかったです」と語り、ノビ選手は「僕は格闘技が大好きで、自分たちの前の試合の天心vs堀口に本当に感動していて、同じ場所に一緒に立てることは光栄です。(花道を歩くのは)気持ちよかったですね。ゲームをやっていて、こういう場所に立てるというのは考えたこともなかったので」と話していました。

日韓双方に共通していたのはまずe-Sports、ならびに『鉄拳7』を広めたいという意識です。「韓国では『鉄拳』はマイナーな文化になっているので、もっと大きな大会が行えれば」と、初期の『鉄拳』から触れているクダンス選手の話には説得力はありました。「韓国ではゲームセンターが年々閉店していく一方なので、こういう機会を増やし、盛り上げたいです」とシャネル選手は語っていました。

「RIZIN.13」ではレギュラーの選手たちほぼ全員が厳しいマッチメイクを組まれていたこともあり、加えて今回のe-Sportsの試合が組まれたことも含めてこのイベント史上、記憶に残る大会となったことには違いありません。

後編ではバンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘氏に、どのようにして今回の格闘技イベントに『鉄拳7』が採用されたのか、などの気になる話をうかがったインタビューをお送りします。

Game*Spark 葛西 祝

最終更新:11/8(木) 19:00
Game Spark

あなたにおすすめの記事