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【谷口 誠コラム】思いあう力

11/9(金) 16:20配信

ラグビーリパブリック(ラグビーマガジン)

■「リーチさんの方がためこんでしまうんじゃないですか。気にしすぎるくらい、他人のことを思う人なので」

 キャプテンは孤独である。そう再認識させられたのは、10月の日本代表の合宿中。太陽の笑みがトレードマークの、姫野和樹の言葉を聞いた時だった。

 昨年、ルーキーながらもトヨタ自動車の船頭役に抜擢されたことを振り返り、語った。「チームを良くするために何もできていなくて、これでいいのかと悩んで。入社1年目で、誰に頼っていいかも分からなかった」。人知れぬ苦悩の連続だったと明かし、さらに続けた。「色々なことがたまって部屋で泣いたりしていた。人生で一番ネガティブな時期だったかもしれない」

 ラグビーのキャプテンはグラウンドの外でも仕事が山積する。まずは集団の方向を1つにまとめる。チームの目標や大義は何か、どうやってそこに到達するのか。出番に恵まれぬ仲間への目配りや、コーチ陣と選手とのつなぎ役も求められる。チームが勝てないと、困難はさらに増す。

 その荷の重さは、背負った人にしか分からない。筆者が以前所属していたチームに、背中でも言葉でも語ることのできるキャプテンがいた。ただ、練習の強度や緊張感をもう一段、高めようとした時、集団は一枚岩になれなかった。部員間の温度差、周囲のサポート…。理由は様々にあっただろう。勝てそうな試合をいくつか落としたこともあり、少しの隙間風が残ったまま、冬が終わった。

 約10年後、そのキャプテンと酒席をともにした。「俺はもう、人をまとめる立場には立ちたくない。それほどあの1年は重かった」。思わぬ告白に、当時気付けなかった悩みの深さを知り、十分なサポートができなかった我が身を恥じた。

 だからだろう。姫野の告白のすぐ後に聞いた別の選手の言葉に、何かまぶしいような感覚を覚えた。

 練習中、ひときわ大きな声を響かせていた流大にその理由を尋ねた時。「声の質だと思います」と照れた後で、話してくれた。

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