ここから本文です

豊ノ島、引退よぎった2年「達成感」求め高み目指す

11/9(金) 10:00配信

日刊スポーツ

しこ名を呼び上げられ、本場所の土俵に上がった瞬間、その胸の高鳴りはいかばかりだろうか。耐え抜いた約2年にわたる雌伏の時を経て、豊ノ島(35=時津風)が東十両13枚目に戻ってきた。16年秋場所以来の関取復帰。11日に初日を迎える大相撲九州場所(福岡国際センター)の本土俵に、化粧まわしを締め本場所用の締め込みをまとった男が戻ってくる。35歳4カ月での再十両は、戦後6位の高齢昇進だ(1位は大潮の39歳5カ月)。

【写真】関取復帰を果たし、笑顔を見せる豊ノ島

2年前の7月。名古屋場所前の稽古で悪夢が襲った。左アキレス腱(けん)皮下断裂。2場所連続全休し、本場所の土俵に戻ったのは2年前のここ博多。気がつけば番付は幕下に落ち、稽古用の黒まわし姿だった。「まあ2、3場所で関取に戻るだろう」という私の予想は外れた。あの幕下陥落の最初の相撲から、再十両を決めた先場所まで全12場所、計77番のほとんどを取材し、コメントを取ってきた身としても「ああ、もうダメかもしれない」と本人も悟った「引退」の2文字を感じざるを得なかった。

家族はじめ周囲の支えは不可欠だったろう。ただ何より、心が折れそうな時、このままでは終われないという本人の精神力が復帰への道を歩ませたはずだ。そんな豊ノ島を場所前の6日、時津風部屋で取材する機会があった。その様子をここで紹介したい。

Q場所に臨む心境は

豊ノ島 半々かな。楽しみなのと…。関取として復帰した状況だけど、常に引退とかも考えてしまう場所になるかもしれない。楽しみなのは楽しみだけど、不安もいっぱい。う~ん、でもどうかな…。楽しみの方が大きいかな。先場所、幕下で取って不安だったのに比べれば、全然ですね。

復活を果たしたことで、以前に増して慎重になる自分がいる。幕下陥落後も2度、見舞われたケガ。もがき苦しんだ2年という時間が、自分の少しだけ変えた。

豊ノ島 1つの達成感というのがあるんですよ。もしもの時があっても、もう悔いはないという。聞きようによっては弱気に受け取られるかもしれないけど、ここまで戻ったという達成感。頑張ってここまで戻ってきたという達成感がある。

何度も「達成感」の言葉を使った。仮にこの先、再び大けがをして現役生活を断たれるようなことがあっても、1つやり遂げたことでスッキリ割り切れる。それが今後の心の支えになるだろう。もちろんケガには慎重だ。

豊ノ島 勝負事だから何があるか分からない。ケガの怖さを経験して、絶対ということはあり得ない。ケガの怖さ、勝負の難しさ。(再十両まで)こんなに時間がかかるとは思わなかったからね。いざ、何か起こったときは、現実を受け止めないといけないこともある。

不安はある。だが、挫折を乗り切った自信の方が大きい。それは自身が歩んできた経験則からも言えるようだ。

豊ノ島 十両でやれるという自信はもちろんある。気持ちは絶対、大丈夫。これで終わる男じゃないと思ってる。これまでの人生も逆境を乗り越えてきたと思っているから。

もちろん目標は十両じゃない。何度も三役を経験し、優勝決定戦の舞台にも立ち、優勝次点も4度。三賞は10回、金星4個も誇れる実績だ。あの味わった幕内上位の舞台に再び戻りたい。

豊ノ島 もう1つ、上(幕内)に上がるという目標はボンヤリではなく、頭の中にしっかりありますよ。(ライバルであり仲のいい)琴奨菊とも幕内で対戦したいし、何なら横綱戦も(描いている)。稀勢の里関とは横綱になって対戦していないし、大関(高安)にも何かと気にかけてもらった。まだまだ対戦したい人が、上にはいっぱいいますよ。

一度、地獄を見た男に怖いものはない。復活劇は始まったばかりだ。

【渡辺佳彦】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

最終更新:11/10(土) 23:39
日刊スポーツ

あなたにおすすめの記事