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入試の英語激変、現場に戸惑い 読む・聞くから話す・書くへ

11/10(土) 21:49配信

京都新聞

 「そこは間を置かず話した方が分かりやすい」「もっと自分の意見を出せるといい」。6月、京都府南丹市の園部高であった1年生の英語の授業。自ら書き上げた英作文をスピーチする生徒一人一人に外国語指導助手(ALT)らが向き合って、発音や文章構成をチェックする。この日、指導した教員は計4人。手厚い体制に、中村明日美さん(16)は「日本語にない発音など細かく教えてもらえた」と満足そうに話した。
 同高では、1年生が毎週1回、外国人と会話する時間を設けている。「自分の考えが述べられているか」など英作文やスピーチの評価観点を整理して指導に役立てており、今後は議論など即興性が求められる英会話にも力を入れていく。「声に出すことに抵抗がある生徒もいるが、一歩ずつ自信をつけてもらいたい」と英語科主任の光木宏教諭(44)は話す。
 この学年が3年生になった時、大学入試の英語は大きく変わる。
 現行の大学入試センター試験で測られてきた英語力は、単語や文法の暗記をはじめ、読む、聞くなど「インプット」が中心だった。2020年度からは民間検定が導入される予定で、話す、書くなど「アウトプット」の力も評価される。国際化が進む中、実用的な英語力を育てる狙いがある。
 一方、入試の大きな変化は現場に戸惑いを生んでいる。
 大学入試センターが認定した民間検定は7団体8種類あり、目的は海外留学やビジネスなどさまざまだ。全国立大でつくる国立大学協会は民間検定を入試で活用する方針を示しているが、東京大は9月に「必須としない」と表明。各大学の具体的な活用方法もはっきりとは示されていない。
 京都府立高で英語を担当する40代男性教諭は「そもそも異なる検定で入試の公平・公正性が保てるのか。これだけ決まっていないことが多いと、生徒の負担があまりに大きい」と国の方針に疑問を投げかける。
 英語力など実用的な力の養成が叫ばれる中、多様な教科科目を学ぶことの大切さを訴える声も聞かれる。
 「すぐに役立つことが全てではない」。全国漢文教育学会員で、鴨沂高(京都市上京区)で国語科を担当する向高亜由美教諭(50)は言う。
 日本の歴史の中で漢文は、中国などから最新の知識や情報を取り入れる際に用られた「先進的な外国語」だった。江戸時代まで知識人の教養は漢文が中心で、紫式部や清少納言も漢文への造詣は深かった。現代日本語の根底には漢文文化が脈打っている。
 「千年前も私たちと同じような人間がいて、物事を深く考えていた。漢文を通し、変わることのない人間性に触れられる」と向高教諭は強調する。
 だが現代の日本の教育では、漢文の存在感は低下する一方だ。大学入試の国語でも、資料やグラフの読み解きなど実用的な力に重心が置かれつつある。向高教諭は「日本人が受け継いできた言語表現の蓄積が忘れ去られてほしくない」と語る。
 <学びアップデート 過熱する「人材」教育2>  社会の激しい変化の波は、大学をはじめ、高校や中学、小学校までも巻き込み、学びの形を変えようとしている。大きなうねりの中で、新たな教育を模索する現場を点描する。

最終更新:11/10(土) 21:49
京都新聞

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