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宇多丸が、カルト的人気を誇る森田芳光監督作『ときめきに死す』を語りつくす!

11/10(土) 21:19配信

Movie Walker

1984年に公開され、いまなお多くの映画ファンからカルト的人気を誇る森田芳光監督の『ときめきに死す』が10日、東京・池袋の新文芸坐で開催中の「2018年の森田芳光 –森田芳光全作品上映&史上初!ライムスター宇多丸語り下ろし-」で上映され、本特集上映の発案者であるライムスター宇多丸と、森田作品のプロデューサーであり森田監督の夫人でもある三沢和子が超満員の観客を前にトークショーを行なった。

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森田監督は1978年に、現在の「ぴあフィルムフェスティバル」の前身にあたる「ぴあ展」に『ライブイン茅ヶ崎』を持ち込んで以降、映画監督として一線級で活躍。松田優作主演の『家族ゲーム』(83)や吉本ばなな原作の『キッチン』(89)、社会現象を巻き起こした『失楽園』(97)など数多くの傑作を世に送り出す。日本アカデミー賞最優秀監督賞を1度、優秀監督賞を3度受賞し、2011年12月20日に61際の若さでこの世を去った。

この日上映された『ときめきに死す』は、23歳という若さで芥川賞を受賞した作家・丸山健二の同名小説を大胆なアレンジで脚色した森田の代表作の一つ。孤高のテロリストが宗教家暗殺に失敗するまでの過程を、男2人と女1人の奇妙な共同生活と共に描きだしたクライム・ムービーだ。森田監督の前作『家族ゲーム』のスタッフが再結集し、クールでスタイリッシュな映像に重点を置き作り上げられた。

「『家族ゲーム』が公開になる前、のちに伊丹十三監督の映画のプロデューサーをされる細越省吾さんからいただいたお話です」と切り出した三沢は、森田監督が原作を読んだ瞬間に映画としてのビジョンを思い描きながらも、絶対ヒットしないだろうと悩んでいたことを明かす。しかし「沢田研二が主演だと決まった瞬間に、ジュリーを監督できるならと引き受けたのです」と振り返った。

本作に「キャスティング」としてクレジットされている三沢は「私は何でもやる係で、どうしようかとなってキャスティングになった」と経緯を明かしながら、宇多丸とともに魅力的なキャストの配役の決め手や裏話などを紐解いていく。本作は主演の沢田を筆頭に杉浦直樹や樋口可南子、矢崎滋、加藤治子、宮本信子、岸部一徳らが出演している。

「ジュリーが殺し屋の役だから体を作り込んで来ようかと言ったら、森田監督は『しないでくれ』と言ったっていう。いまで言うところのオタク的な青年像で、体もぽちゃんとして、ぶっちゃけた話格好が悪い。あの感じのままでいこうというのも先見の明なのではないでしょうか」と宇多丸が森田監督作品の特異さを力説すると、三沢も「後々の『模倣犯』の中居くんにも繋がっているのかもしれませんね。その時点で沢田さんも、この映画は正統的なものとは一線を画した映画だと理解したんじゃないかと思います」とコメント。

また宇多丸が「『太陽を盗んだ男』がかっこいいジュリー感を出してのテロリストだったので、俺はこういう使い方をするんだぞという森田さん流のひねりではないか」と、本作の後に製作された『メイン・テーマ』(84)での薬師丸ひろ子も例に挙げながら仮説を提唱すると、三沢も「聞いてないけどそうだと思います」と深く頷いた。

さらに本作に込められたテーマをはじめ、自主映画時代の作品や初期の作品との表現のリンクや、森田監督の生い立ちに基づいた女性キャラクターの描き方、また徹底的にこだわり抜かれた本作での色彩設計や技術的なアイデアの数々に触れていく2人。本作の最大の見どころでもある強烈なクライマックスの車のシーンについて三沢は「後年にリメイクすることになる、黒澤明監督の『椿三十郎』のラストがあると思います」とも明かした。

エンドロールで音楽がマーチ調になることについて「粛々と何かが過ぎて行ってしまった感じとファシズム感。時代がきな臭い方に行ってしまう空気を感じた」と宇多丸が語ると、「ぐるぐる回って不穏なものを世界は含んでいるとこの映画には込められている」と三沢は本作に込められたメッセージを解説する。そして宇多丸は最後に「一見メッセージがないタイプの映画に見えるようで強烈な社会的な映画だと思います」とまとめた。

今回の特集上映では、つねに先進的なコンセプトのもとで作り上げられた森田監督の全作品を2か月にわたって毎週土日に連続上映。すべての上映回で宇多丸と三沢のトークショーが開催される。(Movie Walker・取材・文/久保田 和馬)

最終更新:11/10(土) 21:19
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