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<入管法改正>移民社会に踏み出す覚悟を

11/11(日) 8:00配信

毎日新聞

 歴史的な変化の扉が開こうとしています。外国人労働者の受け入れ拡大を目指す出入国管理及び難民認定法(入管法)改正案のことです。政府は新制度について「移民政策とは異なる」(菅義偉官房長官)としていますが、改正内容を聞く限り、政策の大転換でしょう。本格的な移民社会に踏み出す覚悟が必要な時代を迎えたと思います。

 「全国各地の現場では人手不足が深刻化しており、一定の専門性、技能を有し、即戦力となる外国人材を幅広く受け入れる仕組みを作ることが急務であります」

 外国人労働者の受け入れ拡大政策を政府内で取り仕切る菅氏は10月12日の「外国人材の受け入れ・共生に関する関係閣僚会議」でこう述べ、新しい在留資格の実現に意欲を示しました。菅氏はさらに、来年4月の導入に向け準備を進めるよう指示しました。

 今回の法改正は、医師や弁護士など「高度な専門人材」に限定してきた就労目的の日本在留資格を、単純労働を含む分野に拡大する内容です。改正案骨子によると、新たに創設される在留資格は、一定の知識・経験を要する業務に就く「特定技能1号」と、熟練した技能が必要な業務に就く「特定技能2号」の2種類。1号は在留期間が最長5年で、家族の帯同は認められせん。2号は在留期間の更新が可能で、家族帯同も認められます。

 1号の資格取得には、日常会話に支障のない程度の日本語能力と各業務に必要な知識と技能に関する二つの試験に合格する必要があります。新制度が創設されても、途上国の人々を対象に日本の進んだ技術を学んで自国の産業発展に役立てることを目的にしている現在の「技能実習制度」(最長5年)は残ります。3年間の経験のある技能実習生は1号の試験を免除されます。技能実習から1号に移行するケースなどでは最長10年の滞在が可能で、永住許可を得るための要件の一つが満たされることになるそうです。

 1号から2号への移行は可能です。2号の資格取得には1号よりも難しい日本語と技能の試験に合格する必要がありますが、詳細の設計はこれからです。

 改正案を所管する法務省は、介護▽建設業▽農業▽飲食料品製造▽外食業--など14業種から受け入れ希望が出ていることを明らかにしています。不景気などにより人手不足が解消された場合には、受け入れを停止できる措置も盛り込まれます。

 日本に在留する外国人はおよそ256万人(2017年)です。うち、働く外国人は昨年10月末現在で過去最高の約127万9000人に上っています。08年は約48万6000人でしたから、2.6倍以上に増えたことになります。

 法の定めるところによれば、増加のほとんどは高度な専門人材であるはずです。しかし、17年の外国人労働者を在留資格別にみると、急増しているのは留学生のアルバイト(約29万7000人)と技能実習生(約25万8000人)。コンビニエンスストアで働く外国人が最近増えたと感じている人は多いと思いますが、大手コンビニ4社で働く外国人は今年8月現在で5万5000人を超えています。外国人の単純労働者に支えられ成り立っているのが日本社会の現実です。

 留学生は原則として1週間に28時間以内しか働けませんが、「アルバイトを掛け持ちして規制をのがれる学生も多い」(東京都内の私立大学教授)そうです。日本語学校への留学でも在留資格を得ることができ、来日するためにブローカーに100万円近い仲介料を支払うケースも珍しくありません。時給1000円で週に28時間働いても月の稼ぎは11万円程度。都市部であれば生活するのがやっと。仲介料を返すために、一部の留学生は複数のアルバイトに手を出し、「出稼ぎ留学生」と化すわけです。

 1993年に始まった技能実習制度は長時間労働や賃金不払いが多数発生し、制度厳格化のための技能実習法が17年に制定されました。同法3条には「労働力の需給調整の手段として行われてはならない」と書かれていますが、建前の域を出ません。「日本人が敬遠する重労働を安い賃金で肩代わりさせている」との批判が続いています。実習生は年間7000人程度が失踪しています。闇の世界に入ってしまう外国人が増え、社会の不安定化につながることが憂慮されます。

 日本の総人口は08年をピークに減少しています。その影響は南の海上にある台風のようなもので、今は脅威を感じませんが、歴史上経験したことがないような大減少が日本社会を襲い、地方を中心に生活も文化も存続の危機に立たされることは間違いありません。女性の社会進出は大事ですが、子どもを産むことができるのも女性だけ。女性にばかり負担を求めるのも無理があるでしょう。

 今回、留学生、技能実習生に頼るいびつな現状を改めようとすることは前進です。問題は、外国人労働者を労働力としてしか評価せず、共に暮らす生活者として迎え入れる意識が不足していることです。安倍晋三首相は今国会の所信表明演説で、外国人材について「社会の一員として生活環境の確保に取り組む」と述べましたが、「いわゆる移民は受け入れない」とする政府の姿勢が高い壁となり、介護や農業などの人手不足対策であれば長く暮らしてもらうことを考える必要はないという思考が支配的です。

 人口は国のパワーです。でも、国内で生まれた日本人の赤ちゃんは16年から2年連続で100万人を割り込んでいます。団塊の世代の半分以下。日本には単一民族的な認識があり、移民をタブー視する風潮がなお強いと思いますが、人手不足対策に議論を矮小(わいしょう)化するのではなく、外国人労働者を日本社会の一員として迎え入れ、どういう日本をつくるのかを真正面から論じるべきときでしょう。

最終更新:11/11(日) 8:00
毎日新聞

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