ここから本文です

安田純平さん解放で議論に「自己責任」はどこまで求められる

11/11(日) 9:26配信

日刊ゲンダイDIGITAL

 シリアで拘束されていたジャーナリストの安田純平氏の生還を巡り、自己責任論が盛り上がっている。ややこしい問題が浮上するたび、自己責任が問題になるが、巷の人はどう思っているのか。40代男性は娘の学級崩壊に関連してこう言った。

「娘の小学校が学級崩壊していることを知人にグチったら、『そんな学校を選んだ親の責任だろう。嫌なら、カネを払って私立に行かせるべきだ』と言い返されてビックリしました」

 フリーターの30代男性はこう言う。

「僕が大学を卒業したころは就職氷河期だったんです。何十社と面接を受けましたが、内定はもらえませんでした。僕なりに努力したのに、バイト先の店長に『大学まで行って正社員になれないのは努力が足りないんじゃないか』と言われたのはショックでした」

■他人を助けたくない気持ちの表れ

 努力不足は自己責任というわけだが、記者も昨冬の大雪でこんな経験をした。降り積もった雪でドアが開かず、部屋に閉じ込められた近くの人を救出した。その話を知人にすると、「対策していなかったその人の責任でしょう。赤の他人によくやるね」と苦笑され、寒々しいものを感じた。NPO「ほっとプラス」代表理事で聖学院大学客員准教授の藤田孝典氏が言う。

「先進国はどこも成長曲線が頭打ちで、努力と経済的な豊かさが比例しなくなっています。経済成長が止まると、人々は働く時間を増やし、生活に余裕がなくなる。そんな中で他者とのつながりを手放し、心のゆとりをなくし、助け合うということを拒むようになってきているのです」

 他人を助けたくないという気持ちが、「自己責任」という言葉に表れてきているという。

「今は少し景気が上がってきたので、多くの人が『生活保護の人は就職して抜け出せ、抜け出せないなら自己責任だ』という風潮があります。しかし、生活保護の背景には、うつ病など努力ではどうにもならない原因も少なからずある。そういうことには思いが及ばないのです」

 うまくいっている人には、想像できない不遇な環境。それをひとくくりにして「自己責任」で叩くのが今の世の中。

「自己責任を求める風潮が続けば、国は社会保障制度の水準を下げることも容易になります。一度失敗したらもうダメだということで国民は萎縮します。結果、経済の衰退や少子化が進むことになっていくでしょう」

 だれもひとりでは生きられないのだが……。

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ