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茨城県内最多2万件 いじめ、軽微も認定 “線引き”に課題も

11/11(日) 8:00配信

茨城新聞クロスアイ

文部科学省の問題行動等調査で、県内の小中高校などが2017年度に把握したいじめの件数は前年度比約1・5倍の1万9870件と過去最多を更新した。同省が早期対応に向け軽微な事案も含める方針を打ち出したことが主な要因。県教委は「いじめは小さいうちに芽を摘み取る」と未然防止に力を注ぐ。一方で、認知漏れの存在や判断基準の統一など課題も残る。

■違和感

いじめ問題の転機は2011年に起きた大津市の中2いじめ自殺事件。この教訓からいじめ防止対策推進法が施行され、初めて「いじめ」が定義された。

文科省はいじめを積極的に認知する姿勢を打ち出した。「いじめの認知件数が多いのはマイナス評価」という学校現場の抵抗感を払拭(ふっしょく)するのが狙い。ささいなけんか、ふざけ合いも、一方的であれば「いじめ」に含まれた。

県北地域のある小学校では、日常生活上の児童への目配りに加え、定期的にアンケートを行い、困っていることや嫌な思いをしたことなどの把握に努める。同校長は「子どもたちの『違和感』を絶対見逃さないという教員の意識は高まっている」と、いじめ認知に前向きだ。

文科省の方針転換を受け県内の認知件数も急増したが、県教委は「学校現場が子どもたちをきめ細かく見ている裏返しで、逆に評価すべきこと」とする。

■対処と防止

県教委は事案発生後の対処とともに、未然防止に力を入れる。県内5カ所の教育事務所に相談窓口を設置したほか、各校にスクールカウンセラーを配置し生徒の相談に当たっている。

生徒指導の視点を取り入れ、子どもの居場所と絆をつくる授業づくりのほか、優れた実践例をまとめ、教員の指導力向上に役立てている。スクールカウンセラーによる教員向けの研修会で教育相談スキルを身に付けるなど、「いじめの起きにくい学校づくり」(県教委)を進める。

また、県や各市町村で専門家らを交えた調査委員会を設けるなど、重大事態への環境整備も進む。

「報告がないから、いじめは起こっていないとは言い切れない」。県調査委の金丸隆太茨城大准教授は、いじめの認知件数が急増する中、「認知漏れ」の存在を指摘する。業務の忙しさや、いじめは「大ごと」との意識から、校内で解決しようとした結果、事態が悪化した例もあるという。

■現場の判断

鹿行地域の小学校でいじめ問題を担当する指導主事の男性教諭は、新学習指導要領の導入などに伴い「教員の仕事量は増えている。努力はしているが、100%認知は困難を極める」と打ち明ける。

金丸准教授は「報告すれば(県など)行政は助けてくれる存在だと現場に浸透させることが必要」と全ての事案を認知できる環境づくりの必要性を挙げる。

同調査委の茂手木克好弁護士は「子どもの行為のありとあらゆるものが、法の定義するいじめに該当し得る可能性がある」と指摘。いじめを広義に認定することで早期発見につながる一方、いじめかどうか判断する“線引き”の難しさを指摘する。

男性教諭も判断基準について「個人での認識の違いはどうしても生じてしまう。全員で基準を統一するのは難しい」と指摘。その上で「絶対に一人で判断しないようにしている。必ず複数の目で見ることが大事」とする。

県教委も「個人ではなく組織で対応することが不可欠」とし、定義を限定解釈しないことや、学校全体で共通理解を持つことを強く呼び掛けている。(朝倉洋)

茨城新聞社

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