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<健康>「母乳を搾りきらないと乳がんになる」は迷信

11/11(日) 9:30配信

毎日新聞

 国内の女性の11人に1人がなるといわれる乳がん。最近では漫画家のさくらももこさんの訃報で関心が高まり、乳がんに関するさまざまな情報がインターネット上にあふれた。その中で気になったのが、「母乳外来などで母乳マッサージを受けず、断乳、卒乳後に古い母乳が残ったままだと『乳がんになる』『乳がんの発見が遅れる』『石灰化して乳がん検診で毎回要精密検査となってしまう』」という言説。これらは“デマ”なのか、そうとも言い切れないのか。がん研有明病院乳腺センター医師の宮城由美さん(乳腺専門医)に聞いた。(毎日新聞医療プレミア=中村好見)

 ◇「母乳を搾りきらないと乳がんになる」ことに科学的根拠はない

 --「古い母乳が残ったままだと『乳がんになる』『乳がんの発見が遅れる』『乳がん検診で要精密検査となってしまう』」というのは正しくない情報なのでしょうか。

 ◆宮城由美さん 母乳が乳腺の中で滞り、袋状にたまった状態を「乳瘤(にゅうりゅう)」と言います。乳瘤ががんになることはありません。授乳中や断乳直後にできることがあり、触るとしこりとして感じられることがありますが、一般的には段々吸収されて小さくなります。超音波検査をすると、比較的簡単に判別できます。

 まれに乳管の中で固まって石灰化することはありますが、マンモグラフィで乳がんの石灰化と区別できることがほとんどです。「断乳時に母乳マッサージをして母乳を搾りきらないと乳がんになる」ということに科学的根拠はありません。

 --断乳については、産院や母乳外来でも科学的根拠のある情報を伝えられることが少なく、十分な専門知識がないと、情報の真偽を判断するのは難しいと感じました。乳がん患者から同じような質問を受けたことはありますか。

 ◆乳がん患者さんから、「母乳を搾りきらなかったから、私は乳がんになったんでしょうか」と聞かれたことがありますが、「母乳を搾りきらなかったら乳がんになる」というのは迷信です。一般に、断乳後に乳腺内に残った母乳は、自然に体内に吸収されていきますので、乳腺炎にならないように、自分で張りや痛みを確認しながら搾る程度でよいと思います。

 --断乳後、しこりや乳頭からの分泌が続いて、「乳がんではないか」「放置していると乳がんになるのではないか」と不安になる人も多いようです。

 ◆授乳中や断乳直後にできたしこりの多くは乳瘤です。また断乳後も、乳頭からの母乳の分泌は長い人で2、3年続くこともあります。注意が必要なのは、しこりが少しずつ大きくなって、硬く動かない場合や、赤色や茶色の分泌物が出てきた場合です。ただ、症状だけで乳がんを判別することは難しいので、気になる症状があれば、すぐに乳腺専門医のいる病院を受診しましょう(日本乳癌学会の乳腺専門医リスト http://jbcs.gr.jp/member/aboutus/senmonilist/)。

 授乳や断乳時のトラブルを聞くと、ネガティブな印象を持つかもしれませんが、授乳経験のある女性は、授乳経験のない女性と比較して、乳がんを発症するリスクは低くなります。また、授乳期間が長くなるほど、同じく乳がんを発症するリスクは低くなります(日本乳癌学会の診療ガイドライン https://jbcs.gr.jp/guidline/guideline/g4/g41250/)。この意味でも母乳育児のメリットは大きいことも知っておいてほしいと思います。

 ◇乳がんの「検診」と「診察」は異なる

 --国が推奨している乳がん検診の対象は40歳以上で、30代以下では、メリットよりも、結果的に不必要な放射線照射や組織検査、治療を受けたり、精神的負担を受けたりするデメリットの方が大きいと聞きました。デメリットがある、と聞くと何となく検査を受けることをためらってしまいます。

 ◆「検診」と「診察」は異なります。健康で何も症状がない人が受けるのが乳がん「検診」です。一方、しこりなど気になる症状がある人は、たとえ30代以下でも、授乳中であっても、乳腺専門医がいる病院で「診察」を受けましょう。一般的には、まず問診、視触診、マンモグラフィ、超音波検査を実施します。検診と違って、健康保険が適用されます。

 --乳房の自己検診は必要でしょうか。

 ◆乳房の異常に気付くためには「普段の自分の乳房の状態を知っておく」ことが大切です。月に1度は自己検診を行いましょう。排卵から月経終了までは乳房が張るため、閉経前の人は、月経終了後1週間前後で行うとよいでしょう(日本乳癌学会 患者さんのための乳癌診療ガイドライン 自己検診の方法 http://jbcs.gr.jp/guidline/p2016/guidline/g2/q06/)。国の乳がん検診の対象ではないこともありますが、34歳以下の人で乳がんが見つかったきっかけのほとんどは自己発見です(厚生労働省 若年性乳がんの特徴 発見契機 http://www.jakunen.com/html/tokucho/yogo.html)。

 また、検診では発見が難しい乳がん、検診と次の検診の間に急速に進行する乳がんもあるので、検診を受けている人も自己検診をすることが大切です。

最終更新:11/11(日) 9:30
毎日新聞

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