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浜松市「はまかぜ」運航休止 消防ヘリ操縦士、確保に課題

11/11(日) 7:31配信

@S[アットエス] by 静岡新聞SBS

 全国で相次ぐ消防防災ヘリコプターの墜落事故を受け、浜松市消防局が安全対策の一環で操縦士2人が搭乗する「ダブルパイロット制」が整うまでの間、市消防ヘリ「はまかぜ」の運航を休止する措置を取った。同局は2019年10月の再開を目指すが、運休に至った背景には、消防防災ヘリの運航に対応できる技量や経験のある操縦士の確保、養成が全国的な課題となっている現状がある。

 ダブルパイロット制は機体を操縦する機長とは別の操縦士が同乗し、計器のチェックや周囲監視などの安全管理を担う。機長の体調変化など不測の事態が起きた場合、操縦を交代することもできる。総務省消防庁の有識者会議でも安全確保に向けて導入の必要性が示された。8月に群馬、17年3月に長野で相次いで墜落した各県の防災ヘリはいずれも、1人体制での運航だった。

 「はまかぜ」の場合は16年6月以降、市消防航空隊で唯一資格を持つ操縦士が、全ての運航を1人で担っていた。「法令上1人で操縦できるが、相当な苦労や負担を掛けていたことは間違いない」。同隊の植平耕市隊長は代わりがいない状態でこれまでフライトを続けてきた操縦士を気遣った。

 一方、県の防災ヘリは委託会社を通じ、3人の担当操縦士が1人ずつ交代で搭乗する1人体制で運用。県消防保安課は「実現まで時間が必要だが、将来的には2人体制にしたい」と話す。静岡市消防航空隊は所属する3人の操縦士が2人同時に乗るダブルパイロット制を実践する。

 消防防災ヘリの2人体制を進める上で欠かせないのが、豊富な飛行経歴を持つ操縦士の確保、養成だ。消防庁の17年調査によると、消防防災ヘリを扱う全国の自治体や消防のうちダブルパイロット制を採用するのは20団体(37%)。人件費が増えることに加え、操縦士を養成するための高額な経費も懸案になっている。

 消防防災ヘリの操縦には機種別の「型式限定資格」が必要で、同庁の試算では民間養成機関で最初から資格を得るための経費が1人約6千万円とされる。浜松市消防航空隊はヘリの事業用ライセンスを持つ隊員2人が新たに型式限定資格を取る計画だが、それでも1人約2千万円必要と試算されている。

 さらに山岳地域での救助や空中からの消火活動など、消防防災ヘリの操縦は特殊で高度な技術が必要とされ、経験の浅いパイロットが即戦力になれない点なども課題に挙がる。操縦士の高齢化に伴う大量退職も今後見込まれるため、人員確保が一層厳しくなる可能性も指摘されている。



 ■はまかぜ 北遠地域の救急搬送担う

 「はまかぜ」は17年に火災や救助などに対応する災害出動が計153件あった。そのうち6割の92件は転院搬送などの救急出動。中山間地が広がる北遠地域などから市街地の医療機関に向かう運航が多数を占めた。

 同市消防局は患者搬送に45分間以上かかる地域など一定の基準を設けた上で、救急車に代えて消防ヘリの搬送を積極的に実施。同局は「天候や時間帯などヘリが運航できる条件で、有効性があると判断すれば活用する」と説明する。

 一方、県や静岡市の消防防災ヘリは緊急性・公共性・非代替性の3原則を重視。ヘリでなければ難しい山岳救助や林野火災、県外への転院搬送などで主に活用している。

 「はまかぜ」の運航休止の間、浜松市消防局は県内航空消防相互応援協定に基づき、県や静岡市の消防防災ヘリの出動を要請する。ただ、郊外から市街地の医療機関への救急搬送などは、基本的に応援を求めないという。

 消防へリによる患者搬送が比較的多い同市天竜区の佐久間病院の関係者は「搬送時間が短縮されて患者さんの負担が軽減する上、数少ない地域の救急車が管内で活動を続けられる」と有用性を説明。消防ヘリの安全性が高まることへの期待を示した。

静岡新聞社

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