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【漢字トリビア】「吹」の成り立ち物語

11/11(日) 11:31配信

TOKYO FM+

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「吹く」、「吹奏楽」の「吹」。吹く風に、秋の深まりを感じる今日この頃です。

「吹」という漢字は「口」という字を書いて、その右横に「欠席」の「欠」「欠ける」という字を書きます。
「欠」という字は、口を開いて立つ人を横から見た形。
息を吐いたり言葉を発したり、歌を歌ったり叫んだりするときの形です。
「吹」という字の古い字体には、口を開いてひざまずく人の形が描かれています。
一方の「口」は、神への祝詞を入れる器の形。
独自の研究で漢字の成り立ちをひもといた白川静氏は、「吹」という字を、その器に息を吹きかけることで、祈りの効果を無くす「まじない」の意味があったのではないか、と説いています。
いずれにせよ、「吹」という漢字は、「息を吹きかける、ふく」という意味で用います。

「吹き来れば身にもしみける秋風を色なきものと思ひけるかな」
「色なき風」は、紀友則の一句に由来する秋の季語。
中国の陰陽五行説において、秋の色は「白」ですが、友則はそれを「色なき風」と言い換えました。
色のない風はどこか寂しく、心にひたひたと入り込んできます。
少し素気ないその一方で、だからこそ彩り豊かな秋の実りを、さらりと包んで美しく見せてくれるような気もするのです。

ではここで、もう一度「吹」という字を感じてみてください。

「吹き寄せ」は、日本料理やお茶菓子で使われる手法。
秋風が吹けば、紅葉や銀杏、松葉といった木の葉や花が、どこかひとところに寄せて集まります。
その様子を模したのが「吹き寄せ」です。
料理なら、晩秋から初冬にかけて、煮物や前菜、鍋などで、さまざまな秋の食材を盛り合わせます。
お茶席で見る「吹き寄せ」は、冬の始まりの風景を生砂糖や落雁で表現します。
それは、行く秋を惜しむ心誘う風景。
気づけば立冬も過ぎて、冬がいよいよ、やってきます。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『読んでわかる俳句 日本の歳時記 秋』(宇多喜代子、西村和子、中原道夫、片山由美子、長谷川櫂/著 小学館)

(TOKYO FM「感じて、漢字の世界」2018年11月10日(土)放送より)

最終更新:11/11(日) 11:31
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