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『バルバラ』ジャンヌ・バリバール、自らの演技で亡霊を引き寄せる?

11/11(日) 10:00配信

クランクイン!

 『ナントに雨が降る』『黒いワシ』などの名曲で知られるフランスの伝説的シャンソン歌手バルバラの世界を描く映画『バルバラ~セーヌの黒いバラ~』。単なる伝記映画では描き切れない彼女のミステリアスな魅力を仏女優ジャンヌ・バリバールが、斬新かつ幻想的なアプローチで体現してみせた。「映画の中にバルバラの亡霊が現れた」と語るジャンヌのその真意とは?

【写真】映画『バルバラ~セーヌの黒いバラ~』ジャンヌ・バリバール、インタビューカット&場面写真


 本作は、映画『さすらいの女神たち』でカンヌ国際映画祭監督賞を獲得した俳優兼監督のマチュー・アマルリックがメガホンを取った異色ドラマ。バルバラの伝記映画で主演を務める女優ブリジット(ジャンヌ)とその作品を手掛ける監督(マチュー)が、撮影を通してバルバラの魅力に取り憑かれ、次第に彼女に同化していく姿を、実際のステージ映像をコラージュしながら描いていく。

 子どもの頃からバルバラが大好きだったというジャンヌは、「彼女はフランス芸術を代表する女性であり、生きる指針だった」と称賛。「特にティーンエイジャーから大人の女性になる過渡期において、彼女の歌は、私にとって生きる道を示してくれた。すごく深い感情があったり、美しい感情があったり、ちょっと矛盾した感情があったり…そういうものを彼女の歌を通して知り、そして“私”という人間を作り上げていく手助けをしてくれた」と、その存在の大きさを強調する。

 そんな尊敬して止まない歌姫バルバラの映画を「君で撮りたい」とプロデューサーから打診された際、躊躇(ちゅうちょ)なくマチューを推薦したというジャンヌ。「大好きなバルバラの映画を作るなら、監督はマチューしかいない。2人がそろうなら私は何でも受け入れる準備はできていたわ」と声を弾ませる。「だから、脚本なんてどうでもよかった。私が出演を決めるときは“誰が撮るか”が一番の決め手。脚本なんてどうだっていいこと」とキッパリ。


 この映画は、バルバラの人生を描いた作品ではない。映画の中でバルバラの伝記映画を撮る監督と、バルバラを演じる女優の姿を描く“入れ子構造”を成している。「私が演じたブリジットは、私とマチューが一番やりたくない映画の中でバルバラを演じている女優。だから、この役にトライする際、私は一度たりともバルバラに近づこうなんて意識はなかった。ピアノの弾き語りの練習をするときも、自分自身を“核”に置きながら、ブリジットと同じ状況に身を置くことだけを心がけた」というジャンヌ。

 ところがこの映画は、ブリジット、ブリジットが演じるバルバラ、そしてそのブリジットを演じるジャンヌが複雑に交錯し、あいまいな境界線の中で観る者を迷子にする。「この映画のバルバラは、1つの“亡霊”と言えないかしら、とマチューと話をしたの。それだけでなく、私やマチューの青春時代の亡霊でもあるんじゃないかと…私とマチューは撮影現場に毎日行くけれど、どの瞬間に亡霊がやってくるか分からない。知らないうちに降りてきて、それを観る方がどう感じ、どう判断するか。それがこの映画の面白いところでもあるわね」と笑顔を浮かべる。

 翻弄されることで浮かび上がる、バルバラの真の姿…。これはもう説明のしようがなく、映像を観ていただくしか手立てがないが、本作でバルバラのことをさらに深く知ったジャンヌは、「彼女を理想化しすぎていた」部分も発見したと振り返る。「今までバルバラに対して“模範的な女性”という思いを抱いていましたが、撮影後は、逆に反面教師の存在になった。彼女は観客に自分が持っている全ての愛を差し出すけれど、その代償として、“孤独”に耐えながら生きなければならなかった。私にはそれはできない。尊敬する気持ちは変わらないけれど、孤独の中で生きることだけはしたくない」と複雑な思いをかみしめていた。(取材・文・写真:坂田正樹)

 映画『バルバラ~セーヌの黒いバラ~』は、11月16日より全国公開。

最終更新:11/11(日) 10:00
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