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MLSの成功は“本物”か? 注視すべき現在地と2つのポイント

11/12(月) 12:10配信

VICTORY

MLS“本物”の成功に向けた、2つのポイント

MLSの成功は続くのか、それともバブル崩壊に終わるのか、いくつかのポイントがある。

一つは、MLSのテレビ中継の視聴者数がまだまだ少ないことだ。今年4月に「ワールド・サッカー・トーク」が報じたところによると、MLSの1試合あたりの視聴者は約28万5000人だったという。

ケーブルテレビのスポーツ専門局「ESPN」で放映されたMLBの1試合あたりの平均視聴者数は99万6000人、「FOX」局では1試合あたり205万人だった。観客動員数ではMLSに抜かれているNBAだが、2017年の12月25日に開催されたクリーブランド・キャバリアーズ対ゴールデンステート・ウォリアーズのカードは880万人が視聴、同日のヒューストン・ロケッツ対オクラホマシティ・サンダーも500万人が視聴した。

地理的な理由でスタジアムに足を運ぶことのできる人は限られているが、テレビは現地に来ることのできない多くの人に試合を届けられる。そのテレビ中継の視聴者数は、米国の他の人気スポーツにまだ水をあけられている。

もう一つは、MLS人気を牽引するような米国人スーパースター選手がいないことだ。MLSのレベルの問題が絡んでいる。

米サッカーには、米国史上最高の選手といわれる20歳のクリスチャン・プリシッチがいる。ペンシルバニア州ハーシーで生まれたプリシッチは、両親とも米国のジョージ・メイソン大学のサッカー選手だった。父親はその後、サッカーのコーチをしていた。その父親の仕事のため、プリシッチは幼少期にイングランドに住んでいた時期もある。MLSではプレーせず、2015年にはドイツに渡り、U-17ドルトムントと契約。2016年1月には17歳でブンデスリーガデビューを果たし、今シーズンもドルトムントでプレーしている。

昨年19歳で米国代表入りしたウェストン・マッケニーはテキサス州のリトル・エルム出身。マッケニーはユース時代にはMLSのFCダラスでプレー。FCダラスは同アカデミ―出身者と契約することが多かったが、マッケニーは2016年、18歳の時にブンデンスリーガのシャルケと契約した。MLSでプレーしたことはない。

MLSには国際的なスター選手がプレーしているものの、その多くはピークを超えて移籍してきたことから、リタイア・リーグと揶揄する人もいる。フランク・ランパード、アンドレア・ピルロ、スティーブン・ジェラードの3人とも、MLSでプレーすることを選んだのは現役の最後だった。

だからといって、MLSで米国出身の選手が活躍できているというわけでもない。「ESPN」は、2017年シーズン、MLSには米国代表入りできる資格のある選手が、全体の33.7%しかおらず、2012年の52%から、その割合が大きく減少していると指摘した。また、米国人選手の出場時間も減少しており、2013年の52.7%から、42.2%になったと伝えている。

MLSには、米国外から多様なバックグラウンドを持つ選手が集まってきている。しかし、米国人のスターを輩出できていないことは、たとえ米国代表がFIFAワールドカップで好成績を収めても、そこでサッカーに興味を持った人たちをMLSに誘導できるのかが疑わしい。

ちなみにMLSの2018年の最優秀選手候補の一人は、ロサンゼルス・ギャラクシーの元スウェーデン代表ズラタン・イブラヒモヴィッチ。もう一人の候補は、元イングランド代表で、6月にDCユナイテッドに加入したウェイン・ルーニーだ。

米国の若い世代にサッカーファンが増えているとはいえ、日本のJリーグと同様に国内リーグのMLSではなく、海外リーグのファンが多いことも事実だ。実は、米国内のサッカーのテレビ中継で最も視聴者数が多いのは、メキシコの最上位プロリーグであるリーガMXの中継だ。中継されている試合数もMLSより多い。MLSは今年、リーガMXとパートナー契約を結び、シェアを奪い合うのではなく、共存共栄を図っている。もちろん、MLSにとっては、リーガMXだけでなく、プレミアリーグやスペインのラ・リーガのテレビ中継もライバルになっている。

MLSの成功が続くか、停滞するかは、次の放映権料交渉次第だといわれている。観客動員は安定しても、このままテレビ視聴率の低迷が続くと、米国第3のスポーツの地位はないだろう。日本のスポーツ界では「MLSの成功」に注目が集まっているが、その成功が本物かどうか、継続できるかどうかに注視するべきではないか。

<了>

文=谷口輝世子

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最終更新:11/12(月) 12:10
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