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ベンチャーを仲間に、すると新事業は早まる

11/14(水) 12:31配信

ニュースソクラ

「わが経営」を語る 小堀秀毅旭化成社長(3)

 ――「収益性の高い付加価値型事業の集合体」という目標に向けて、今後、どのような戦略が必要でしょうか。

 大まかに言えば3つあると思います。1つは、世の中の大きなトレンドをにらみながら、競争上優位にある事業領域を一層、強化拡大することです。

 2つ目は、新事業の創出です。事業のポートフォリオをどんどん変えるのがカルチャーですから、5年、10年先に柱になる新しい事業の開発に取り組みます。

 3つ目は、役割、使命を終えたような事業や関係会社について出口戦略を講じることです。過去、こういう目的でつくった事業も、世の中は変わりますので、出口戦略が必要になります。

 この3つを常にやり続けて行くことが、最終的に2025年度に目指したい売上高3兆円、営業利益3000億円を実現して、高付加価値型事業の集合体になる戦略だと思います。

 ――事業の新陳代謝を図るのですね。

 ポートフォリオの転換には、足すものがあれば、一方で引き算もしなければいけません。いわば肥満体になってはいけないわけで、常に筋肉質での成長を追求します。

 ――出口戦略はどのように進めるのですか。

 雇用や地域社会との問題を当然抱えながらも、一定の時間軸をもって考えます。ごく一部のメンバーで対象を選別して、時間をかけて、中期経営計画に対する裏中計的なものとしてやることになります。

 その事業が市場でどんなポジションを占めているのか、世のトレンドや市場の成長性がどうなのかなどを勘案します。

 市場がある程度の規模に達せず、今後も拡大が見込めなければ、事業を続けるのは厳しいので、見切る必要があります。

 大きな事業でも譲渡したり止めたりしたものがあります。特に繊維で、2000年代に随分止めています。

 ポリエステル、カシミロン、レーヨンという3大汎用繊維は全て撤退しました。残っている繊維事業は、ユニークで用途開発によって新しい付加価値を提供できるものです。その代わり売上高に占める比率は下がりましたね。

 ――新事業はいろいろあると思いますが、経営資源には限りがあります。どうやっているのですか。

 その時の会社の状況や世の中の動きなどによって、違いがあります。ただ今はラッキーなことに業績に恵まれているし、どの方向に進むべきかある程度見えているので、積極的に新しい芽を育てたいと思っています。

 そのために自社開発もありますが、今やほかと組んでやるオープンイノベーションもありますし、IT(情報技術)によって世界のどこで誰が何をしているのかも分かる時代です。だから全て自前でやるのではなくて、M&A(合併・買収)によって戦略的に取り組むことも可能です。

 我々は、コーポレート・ベンチャーキャピタル(CVC)をつくって10年近くになります。米国に拠点を置き、投資権限をある程度与えて、面白い技術を持つアーリーステージの会社にどんどん投資して、将来、必要に応じて買収する活動をしています。

 我々が強い領域は、技術者を厚くして、より一層強化します。すると、その周辺で我々には足りないけど、やったらいいものが見えてきます。そこではベンチャービジネスの方が進んでいる場合があります。

 オレたちは3年間寝ずに頑張って株式公開を目指すんだという具合に、ベンチャービジネスはスピード感や意欲が全然違いますからね。そういう人たちを仲間にして一緒にやった方が、新事業の開発は速いと思います。

 ――実際に買収しているのですか。

 数社買いましたね。最初は投資して、我々から技術者を派遣したり共同開発をしたりして、その後、100%買い取るというやり方です。他にチェックしている会社があります。

 ――事業化に進んでいるものはありますか。

 例えば、深紫外線です。紫外線の中で波長が比較的短い紫外線のLED(発光ダイオード)を開発しました。殺菌効果が非常に高く、従来の水銀ランプと比べて環境に優しく省エネになります。水や空気など様々な殺菌に使えます。

 深紫外LEDは、ベースとなるシリコンみたいな基板の開発で進んでいた米国のベンチャーを買って、今モジュールにしてサンプルを作り事業化を進めているところです。

 それからCO2センサーがあります。例えば自動車のエアコンの冷媒がCO2(炭酸ガス)になった場合、それが車内に漏れたら検知できます。これをアルコールセンサーに応用して車に付ければ、運転する人が酒臭いとエンジンがかからないようにできます。

 CO2センサーも我々の技術と買収したモジュール化に強い会社の技術を組み合わせて事業化に取り組んでいます。

 ――CO2センサーの事業化はどのような段階ですか。

 今まさにサンプルを出したところで、引き合いはすごいですよ。自動車関係の製品を具体的に見せるためにつくったコンセプトカーに搭載しています。

 我々のコンセプトカーは、原寸大の模型ではなくて、実際に走ります。我々の素材などの製品を36点使っています。そのほとんどはまだ採用実績の無いものです。

 これを自動車メーカーや部品メーカーに持ち込んで、乗って我々の提案を体感していただいています。今はヨーロッパに行っています。

 ――深紫外LEDは、他のメーカーはやっていないのですか。

 競合は出てきていると思いますが、我々は小さくて効率がよく精度のいい物をつくり、その特長をしっかり押さえて、トップランナーとして市場を開拓していく方針です。

(次号に続く)

■聞き手 森 一夫(経済ジャーナリスト、元日経新聞論説副主幹)
1950年東京都生まれ。72年早稲田大学政経学部卒。日本経済新聞社入社、産業部、日経BP社日経ビジネス副編集長、編集委員兼論説委員、コロンビア大学東アジア研究所、日本経済経営研究所客員研究員、特別編集委員兼論説委員を歴任。著書に「日本の経営」(日経文庫)、「中村邦夫『幸之助神話』を壊した男」(日経ビジネス人文庫)など。

最終更新:11/14(水) 12:31
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