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JAL飲酒副操縦士「酒は飲んでいない。マウスウォッシュだ」 国交省に報告書と防止策提出

11/16(金) 23:36配信

Aviation Wire

 日本航空(JAL/JL、9201)は11月16日、ロンドン・ヒースロー空港で乗務前に基準を超えるアルコール値が検出され、男性副操縦士が現地警察に逮捕されたことを受け、監督する国土交通省航空局(JCAB)に社内調査の結果と再発防止策をまとめた報告書を提出した。

【送迎バスやオフィスでの副操縦士と関係者の位置関係】

 赤坂祐二社長は今月の役員報酬を20%、安全統括管理者で運航本部長の進俊則専務は同10%を返上するほか、社外取締役を委員長とする懲戒委員会が下す処分に従う。


◆「酒は飲んでいない。マウスウォッシュだ」

 副操縦士が逮捕されたのは、現地時間10月28日(日本時間29日)。現在も英国で拘留されており、JALも拘束が一時解かれた時に社内調査を短時間行って以降は、事情を聴取できていないという。

 16日、都内で会見したJALの赤坂祐二社長は、「副操縦士に極めて重大な違反があった。絶対あってはならない事例を引き起こしたことに、強く責任を感じている。なぜこういう事態が起きたのかを徹底的に調査し、再発防止に待ったなしの対応をする」と陳謝した。

 副操縦士は、ロンドンを28日午後7時(日本時間29日午前4時)発の羽田行きJL44便(ボーイング777-300ER型機、登録番号JA733J)に、機長2人とともに3人で乗務予定だった。しかし、飛行機へ向かう送迎バスの運転手が、ホテルから空港内にあるJALの事務所へ向かう際、副操縦士からアルコール臭を感じたため、現地警察が検査を実施。英国の規定値0.09mg/lに対し、約10倍の0.93mg/lと、規定を大きく超えるアルコール量が呼気検査で検出され、血中濃度検査でも規定値の200mg/lの9.5倍にあたる1890mg/lのアルコールが検出されたことから、身柄を拘束された。

 社内調査の結果、副操縦士が機内で2人の機長とともに整備士とブリーフィングをしていた際、空港の保安担当者がアルコールに関することは一切触れずに副操縦士を呼び出したが、「酒は飲んでいない。マウスウォッシュだ。うがいをさせて欲しい」と、大声を出したことが判明したという。

 副操縦士が過度な飲酒に至った要因として、機長昇格試験や持病といった、さまざまな悩みを抱えていた。また、ヒースロー空港で使われていた旧型アルコール感知器では、アルコール値の不正計測が可能だったこと、滞在先のホテルから乗務する飛行機の機内に入るまでに副操縦士と接触した、2人の機長や客室乗務員、空港の保安担当者など13人のうちアルコール臭に気づいたのは、空港の保安担当者に通報した送迎バスの運転手のみだったとした。

 進専務は、「バスの車内では、副操縦士と運転手の距離は約60センチ、機長とは約180センチだった」とホテルからJALの事務所へ向かう際の送迎バス車内での位置関係を説明した。

 2人の機長は、4回にわたる聞き取り調査に対し、副操縦士のアルコール臭に気づかなかったと説明。一方、副操縦士がアルコール検査を行った際、測定時に行うはずの相互確認を怠っていたことが判明したという。

◆「減俸では済まない」

 副操縦士は拘束が一度解かれた際に行われた社内調査で、検査方法が適切であったかと問われた際、「申し訳ございません」と発言。会社側は、副操縦士が測定に必要な呼気を感知器に吹き付けず、不正な検査方法で検査を行ったとの認識を示した。

 再発防止策として、海外空港への配備が遅れていた不正が行えない新型アルコール検知器の配備を、週明け19日までに完了させる。また、運航規定のアルコール濃度制限値の見直し、制限値を超えたアルコールが感知された際の厳罰化、客室乗務員や整備士、運航管理者、グランドハンドリングスタッフへのアルコール検査の導入などを進める。

 赤坂社長は「飲んだら乗せない。乗るなら飲ませない。極めて当たり前のことを、きっちりやっていく」と再発防止策について説明した。

 また、将来的な対策として「顔認証が使えるのではないか」(赤坂社長)として、現在の再発防止策以外にも対応策の導入を検討していく。

 副操縦士への判決は、11月29日に言い渡される。赤坂社長は、「アルコール検査をすり抜けられると考えていたのではないか。運航乗務員としての適性を欠いており、社員としての自覚が欠けている。判決が出次第、極めて厳重な処分にならざるを得ない」と語った。

 また、自身への処分についても、「懲戒委員会が下す処分に従う。役員報酬の20%返上では済まない」(赤坂社長)と述べた。

◆酒の怖さ自覚促す

 副操縦士は、機長昇格訓練の再開を控えた段階だった。進専務は、多量の飲酒に至った背景として、「本人に対する聴取ができていないが、機長昇格がもしかすると背景にあったのかもしれない。しかし、本人がうまくいっていないということではなかった」と述べ、上司が操縦技量について疑問を感じることはなかったという。

 今回の逮捕を受け、JALではパイロットなどの飲酒に関する新しいルールを策定している。新ルール施行までの措置として、パイロットの乗務開始24時間前以降の飲酒禁止や、国内や海外の滞在地での飲酒禁止を11月1日から実施している。赤坂社長は、「公共交通機関に携わる者として、お酒がいかに怖いものかを我々自身が自覚しないといけない。我々にとって、お酒は特別な存在であることを十分に認識すべき」と、飲酒に対する意識を改める必要性に触れた。

 一方、乗務パターンによっては飲酒ができない状況になり、ストレス解消がアルコール以外の手段に移るといった、新たなリスク要因発生につながる可能性がある。赤坂社長は「ストレスを発散する方法は色々あると思うので、お酒がダメだからストレスがたまるということではないと思う」と述べた。

 また、副操縦士の逮捕は英国でも大きく報じられた。逮捕の影響について、赤坂社長は「ロードファクター(座席利用率)が落ちたり、キャンセルが増えるということはないが、これまで積み重ねてきた信頼が大きく揺らいだのは、紛れもない事実」と述べ、再発防止策により信頼回復に努めるとした。

Tadayuki YOSHIKAWA

最終更新:11/16(金) 23:56
Aviation Wire

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