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家族と暮らせない子はかわいそうですか? 施設で育ったお笑い芸人を主人公に映画を撮った理由

2018/11/17(土) 11:02配信

BuzzFeed Japan

「かわいそうな存在」として描きたくはなかった。

児童養護施設に関連する物語はたいてい悲しいものばかり、どこか重く、暗い。そんなお決まりのパターンに抗うことは映画を撮影する前から決めていた。

「正直、社会的養護出身の人をかわいそうな存在として描く映画が大嫌いなんです。悲しい物語を見せて、見た人に心を傷めてもらうことも一つのやり方ではありますが、大事なことは必要な人にサポートが行き渡っていないと伝えることです」

だからこそ、施設出身のお笑い芸人を主人公に据えた。映画の中には主人公が自身の経験を笑いに変えるシーンも登場する。

施設の食事を作ってくれていた職員のエピソードや一緒に施設で育ったかつての友達が性産業で働いていることを笑いのネタに盛り込むシーンに批判的な人がいることも理解している。それでもこれまで興味を持っていなかった人へ届けるために必要な表現を模索した。

社会的養護のもとを巣立った女性のなかには、仕事を失い、住む場所も失った末に性産業へ足を踏み入れざるを得ない人々がいる。そうした現実を踏まえ、映画には施設を出た後、性産業で働く女性も登場させている。

「施設を出たすべての女性が性産業で働くわけではありません。でも、残念ながら風俗で働く誰かの話を聞くのは “施設あるある“ なんです。『彼女たちが自ら望んで性産業で働いていると思いますか?』と問いかけたかった。この状況をどう思いますか?と」

「彼女たちが生きなくてはいけない現実や生い立ちを知ったら、自己責任なんて言えないと思うんですよ」

一人ひとり抱える困難は異なるからこそ、様々な経験をした当事者の声を反映させたい。そんな思いから、これまで児童養護施設出身者を支える団体などに取材をしてきた。

長編化へ向けて、取材は継続中だ。施設出身といっても様々な人生を歩んでいる人がいる。そうしたそれぞれの人生をグラデーションで描きたいと西坂さんはいう。

「もちろん、全ての人が道を踏み外している訳ではなく、普通に生活している人たちも多くいます。一方で路上生活を送るしかない人や犯罪に手を染めてしまう人もいる。すべてを描くことはできないけど、できる限り人々の行動の背景まで含めて描きたいと思っています」

映画のタイトル「レイルロードスイッチ」は線路の分岐点を意味する。同じ児童養護施設という共通の通過点を持ちながら、全く違う人生にたどり着いた児童養護施設出身者への思いがそこには込められている。

人生における選択は必ずしも自分の意志で選べることばかりではない。それでも、どこかには人生の行く先を切り替えるスイッチがあるはず、と。



BuzzFeed Japanは、児童虐待や子どもの権利に関する記事に #ひとごとじゃない のハッシュタグをつけて、継続的に配信していきます。

千葉雄登

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最終更新:2018/11/17(土) 11:02
BuzzFeed Japan

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