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日本の停滞を打ち破るヒントは中華料理にあった!

11/18(日) 10:42配信

ニュースイッチ

ラーメン、焼きギョウザを進化させたプラットフォーム

 少し前のことだが、たまたま点けていたテレビに、狂言師の野村萬斎さんが映っていた。トーク番組のゲスト出演なのだろう。考えを語る中に「狂言はデジタル」という発言があり、軽く驚いた。

 よく聞いてみると、こういうことらしい。狂言には伝統的に決まった「型」があり、それを狂言師が組み合わせ、味つけをして演じる。その「型」がデジタルデータのようなもの、と野村さんは言っているのだ。カチッとしたデジタルな「型」をもとに、アナログな人間が演じるのが面白い、と。

<中国の主食が日本のおかずに>

 『中華料理進化論』(イースト新書Q)の中に、この「狂言デジタル説」に似た考え方が示されていた。この本は、日本在住約20年の中国人料理研究家、徐航明さんが、本場の「中国料理」とは似て非なる日本独自の「中華料理」がどのように生まれ、進化を遂げていったのかを、ユニークな視点で論じた一冊だ。

 同書が定義する「中華料理」とは、日本国内いたるところで食べられるラーメン、焼きギョウザ、チャーハン、麻婆豆腐といった、おなじみの大衆料理だ。

 一方「中国料理」は、横浜や神戸の中華街などで「中国料理○○飯店」といった看板を掲げた店で提供されている、やや高級な料理。中華料理と中国料理はイコールではない。ラーメンや焼きギョウザは、そのままのかたちで中国から伝わったのではなく、いずれも日本に上陸してから独自に進化した食べ物なのだ。

 たとえば焼きギョウザ。実は中国では、ギョウザを焼くことはほとんどないそうだ。ギョウザと言えば「水餃子」であり、中国では「主食」。主食なので、満腹になるまで、一度に10個、20個は平気で食べる。

 それに対し、日本では焼きギョウザを、ご飯の「おかず」として数個を食べることが多い。パリパリとした焼きギョウザの食感は、もちもちとした米飯によく合う。水餃子は、それ自体もちもちしているので、ご飯と一緒に食べたらトゥーマッチだろう。

 つまり、中国の水餃子は、米飯を主食とする日本の食習慣に合うように、焼きギョウザに生まれ変わったというのだ。

 『中華料理進化論』では「プラットフォーム」という言葉を使って、中華料理が日本で進化した要因を解き明かしている。

 同書では、プラットフォームを「製品の技術的な土台となる部分を指す言葉であり、ある一定の共通の仕様を持った階層的な構造」と定義している。PCやスマホを動かすOS(オペレーション・システム)もプラットフォームだ。

 では、中華料理のプラットフォームとは何か。著者の徐さんによると、ラーメンでいえば「スープ→麺→トッピング」という階層構造がプラットフォームにあたる。この三層構造のプラットフォームこそが、日本のラーメンすべてに共通する普遍的な「型」なのだ。

 このプラットフォーム上で、スープ、麺、トッピングそれぞれに工夫をこらし、差別化をはかることができる。実際、ラーメンのスープには、味噌、しょうゆ、塩、とんこつといったバリエーションが広がっており、店ごとに「秘伝のスープ」が開発されたりもしている。

 焼きギョウザのプラットフォームは、もちろん皮と具、そして焼き方だ。皮はパリパリ感を出すために、均一に薄いものが使われる。薄ければ薄いほどパリパリになるそうだ。均一な皮ならば、機械でも作りやすい。調理法も焼くだけなのでそれほど難しくない。

 水餃子の皮は、茹でる時に破れないように、厚くする必要がある。しかも、底部が薄いと破れやすくなるので、広げた時に中央部が厚くなるように作られているのだそうだ。さらに、破れないよう丁寧に包まなくてはならい上に、茹でるのに大量の水が必要。なので、焼きギョウザに比べると調理に手間がかかる。よって機械化は困難だ。

 つまり、焼きギョウザのプラットフォームは「手軽」なのだ。調理に手間がかからない分、具の工夫に注力できる。シンプルなプラットフォームだからこそ、さまざまなアイデアが生まれやすいのだ。

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最終更新:11/18(日) 10:42
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