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「実習生が逃げていく島」町民があえて監視しない理由 「SIMカード買ったら終わり」沖永良部のあきらめ

11/19(月) 14:06配信

withnews

「日本の子だって無理なんだから」

 農業がやりたくて島に来て、地元の農家男性と結婚した大阪出身の20代の女性は言う。

 「逃げる気持ちは分かる。日本の子だって無理なんだから。もし都会より高い時給だったとしても、休日の遊び方も全然違う。島だと車がないとどこにも行けなくて、携帯いじるぐらいしかすることがない。よほど島が好きじゃないと、日本語を勉強する意欲も湧かないと思う」

 別の農家の男性は 「そりゃあの子たちも、お金のいいところに行きたいだろう」と、外国から来た若者たちへの同情を示しつつ、「時給を上げれば人が来るかって? 時給千円にしたら経営が成り立たないし、そんな仕事があれば自分が雇われたい」と言った。

 東日本大震災後は赤字が続き、昨年久しぶりに黒字になった。でも花の需要は景気に左右され、外国産地との競争もある。

 「ここは離島だ。ガソリンは高いし、どこに行くにも飛行機代がかかる。病院は遠い、学校も少ない。本州と、島の生産性は違う。高い給料を払えないのは我々経営者の問題かもしれないけど、格差が是正されないままでどうしたらいいのか」

外国人入れれば「人手不足解消」か

 実習生の失踪は、必ずしも酷い低賃金や待遇が原因とは限らない。この制度の問題の根深さの一つだ。

 実習生に逃げられたある花農家の待遇は、日中は最低賃金、残業代は最低賃金の1.25倍、休日出勤は最低賃金の1.35倍を支払っていた。住まいは風呂トイレ共用の4畳半の個室で、有給休暇もあった。

 奴隷でない以上、選ぶ権利や移動の自由は確保されていく。現場では、国際貢献や技術移転は建前だとみんな知っている。

 できるだけ最低賃金で、かつ熱心で素直に働く労働力を求める側と、できるだけ稼いで可能なら余暇も充実させたい実習生。新しい在留資格が議論されているが、島に期待はない。島が、働き先として選ばれる保証はないからだ。若い日本人たちも定住しない。すべての過疎地に共通する不安だろう。

 働き手を留められる時給を払えば、たちまち経営が苦しくなる地場産業は少なくない。国を挙げて最優先で取り組むべきなのは、地域格差の解消や新たな産業創出ではないのか。

 それをせず安直に外国人労働者を入れれば、地域間格差は一層広がる。政府は「外国人労働者を入れれば『人手不足』が解消され問題解決」という幻想を、ふりまいていないだろうか。

 沖永良部の人たちは、「外国人材の受け入れ」という熱狂とはほど遠い、あきらめの中にいるように見えた。

※ 【訂正】鹿児島県の最低賃金を735円と記載していましたが642円の誤りでした。記事を訂正いたします。

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【#となりの外国人】
この記事はwithnewsとYahoo!ニュースによる連携企画記事です。日本で働き、学ぶ「外国人」は増えています。近くで暮らしているのに、よくわからない。withnewsでは「外国人」の暮らしぶりや本音に迫る企画を始めました。ツイッター(@withnewsjp)などでも発信します。みなさんの「#となりの外国人」のことも聞かせてください。

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最終更新:11/26(月) 20:07
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