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戸川純が『玉姫様』に宿した深淵なる情念と性

11/21(水) 18:02配信

OKMusic

戸川純とアーバンギャルドのおおくぼけいによるユニット、“戸川純 avec おおくぼけい”の1stアルバム『Jun Togawa avec Kei Ookubo』が11月21日にリリースされた。というわけで、今週は戸川純のソロデビュー作品『玉姫様』を紹介する。彼女のデビュー以前と以後では女性アーティストの在り方が変わったようなところすらある、のちの音楽シーンに決定的な影響を与えた人物。『玉姫様』は間違いなく歴史的名盤である。

衝撃だった《玉姫様 乱心》

リリースされて30年以上を経た今でも、個人的には「玉姫様」以上に衝撃を受けた楽曲はそうはない。いや、この30数年間ですら、所謂バカレコード(アレコード)の類いを含めても、ちょっと思い浮かばない。それほど、当時、烏賊臭い高校生男子だった筆者にとって「玉姫様」は“何だ、これは!?”の案件だった。おっさんになった今でも“よくこれを題材したな”と思う。

ちなみに、「玉姫様」が収録されたアルバム『玉姫様』で3曲作詞を担当しているサエキけんぞう(※註:本作では佐伯健三名義)はパール兄弟以前にハルメンズというバンドを組んでおり、そこに戸川純がゲストヴォーカルとして参加していた。その縁もあったのだろう。「玉姫様」の歌詞が完成した時、戸川はサエキに電話をかけ、受話器越しにそれを読み聴かせたという。彼はそれに衝撃を受け、自身が執筆するコラムで[女性の生理感覚を肉体性に結びつけ、狂気さえも感覚の爆発として理路整然と表現に結びつけている完成された世界があった]と述懐している([]は『大人のMusic Calendar』からの引用)。以下、その歌詞である。

《ひと月に一度 座敷牢の奥で玉姫様の発作がおきる》《中枢神経 子宮に移り/十万馬力の破壊力/レディヒステリック 玉姫様 乱心》《もう何も見えない もう聞こえない/あなたの話が理解できない》《神秘 神秘 月に一度/神秘 神秘 神秘の現象》(M6「玉姫様」)。

こちらのほうが《あなたの話が理解できない》である。いや、理解できなくはない。女子だけ別の授業を受けることに対してキョトンとしていた小学生時代ならいざ知らず、その頃になるとさすがにその意味は分かっていた。ただ、《レディヒステリック 玉姫様 乱心》とかは、当時は噂で聞くレベル。正直言って、簡単に共感できるわけもない。だが、それゆえに「玉姫様」を最初に聴いた時、何かいけないものを見てしまったような、まさしくタブーに触れたような感覚を抱いたことは確かだし、それが余計にパンク、ニューウェイブ感を強くしたとも思う。

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最終更新:11/21(水) 18:02
OKMusic

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