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母親役で新境地開く 映画「鈴木家の噓」の原日出子

11/22(木) 12:42配信

カナロコ by 神奈川新聞

 テレビドラマや映画で、数々の母親役を演じてきた原日出子が、映画「鈴木家の噓(うそ)」(公開中)で新境地を見せている。「若い人が主演の作品でちょっとだけ出る母親役が続いていたけれど、家族の誰が抜けても成り立たない物語だったので、出演前からすごく緊張しました」。引きこもりの長男を自死で亡くした家族の物語-。役に込めた思いを聞いた。

 長年、引きこもっていた長男(加瀬亮)が、自宅の部屋で首をつるシーンから始まる。息子の好物を作ろうと買い物から帰ってきた母・悠子(原)は、その現場を目の当たりにして気を失ってしまう…。

 意識は回復したが、あまりにもショックで記憶を無くしてしまった悠子。母を悲しませないよう「お兄ちゃんは叔父さんの仕事を手伝うためにアルゼンチンに旅立った」と、必死にうそをつく夫(岸部一徳)と長女(木竜麻生)。その“噓”を巡って、長男亡き後の「鈴木家」が再生していくさまを描く。

 今作は若手監督を育成する「松竹ブロードキャスティングのオリジナル映画プロジェクト第6弾」だ。野尻克己監督のデビュー作で、脚本は監督自身の経験を基に書かれた。

 「お兄さまを亡くした監督だからこそ、実体験として人間が悲しみをどう乗り越えるのかを描けたんだと思う。人はどんなに悲しくてもご飯を食べたり、笑ったりする。喜劇的なシーンも映画にはあるけれど、それは喜劇というよりもリアルな描写なんです」と作品への思いを語る。

 私生活でも3人の子どもの母親だ。「自然に悠子に感情移入できました。悠子と本当の自分との境目が分からなくなるくらいとても苦しい役だった」と振り返る。

 なぜ長男が命を絶ったのか、その説明はあえて描かれていない。「お兄ちゃんがなぜ自死したのか、家族にも、本人だって分かっていないのかも。その子の心の中を本当に理解してあげることはできるのかなって、そう思います」

 長男を助けようと、必死で包丁を手にロープを切り落とすシーンでは、「助けられなかった自分や死んでしまった長男に対して怒りをぶつけていた部分もある。必死で役にのめり込んだ」。鬼気迫る演技は強い印象を残した。

 自死や引きこもりなど、現代人が抱える生きづらさや、家族の問題を正面から取り上げた脚本を読み、出演を即決した。「いい映画や舞台、音楽をつくることは将来の子どもたちを救うことにつながると思うんです。日本映画を世界にどんどん発信できる監督が、これからもたくさん出てきてほしいですね」

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