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山県亮太「100点のレースはできない」大事なのは9割でも勝てる力

11/24(土) 12:13配信

スポーツ報知

 16年リオ五輪陸上男子400メートルリレー銀メダルの山県亮太(26)=セイコー=は、手応えに満ちあふれた18年シーズンを過ごした。8月のジャカルタ・アジア大会100メートルで自己ベスト10秒00の銅メダル。400メートルリレーも金メダルに貢献した。大舞台で着実に力を発揮できる安定感の秘密はどこにあるのか。20年東京五輪100メートルの表彰台を本気で狙う男の、走りの哲学に迫った。(取材、構成・細野 友司)

【写真】アジア大会を制した「リレー侍」

 20年8月、たった10秒足らずの東京五輪100メートル男子決勝。新国立競技場で、張りつめた静寂から号砲が鳴る。つんざくような歓声の中、表彰台へ―。大望のため、信念を胸に100メートルと向き合う。

 「基本的に100点のレースにはならないと思っているんですよ。例えば東京五輪で、9秒8で表彰台に立ちたいという目標を掲げたとする。それならば、僕は9秒8で安定する力、もっといえば9秒7の力がないと達成できないと思っている。今ある力を100%発揮するつもりでいるけど、求めるのは100%を発揮してやっと出る記録ではない。試合で100点のレースができることはないし、仮にあっても再現性はない」

 大舞台では100%を出し切れないのが自然と受け止める。つまり大事なのは、9割の力でも勝ち切れる力。自己記録タイの10秒00で銅メダルに輝いた今夏のアジア大会で、それを確信した。

 「直前で調子が悪く、必ずしも万全では迎えられなかった。体の状態や技術を踏まえて、あれは90点のレースだったんですよ。でも、10秒00が出た。さらに17年の10秒00より、1000分の3秒速くなっていた。17年の10秒00は、あの時点の100点だと思って、その先がイメージできなかった。でも今回は技術的にも進化して、走りをどう再現するか、その先の走りをどう目指すか説明がつく部分がある。その意味で地力もついたし、9秒9くらいの記録なら出そうだなという手応えがあるんですよ」

 決して大言壮語を口にしない男が、9秒台は間近だと確信を持っている。トップスプリンターの仲間入りを果たしつつある根拠とは。

 「タイムは一つしか出ないけど、記録に影響を与える要素は無限にある。昔は主に技術しか見ていなかった。しかも甘い甘い技術で、そこさえ外さなければ走れると思っていたんですよ。今はもっともっと広い視点で、体の状態がどうか、ご飯は何を食べたか、何時間寝たとかで正確にコントロールできるようになってきて、今はそのレベルが一番高い」

 誰もが120%は出せない。緊張、プレッシャー、気負いも出る。一発勝負で体調が完璧とも限らない。人間なら当然のことを受け入れた上で、結果も出す方法論は広く共感を呼ぶ。

 「スプリントは結局才能の世界、と一線を引かれがちだと思うんですよ。でも、真摯(しんし)に向き合えば誰でも自己記録は伸びるし、いつか頭打ちになるかもしれないけど走りは進化させていける、ということで向き合っていれば、少なくとも10秒00までは来られるよと。それが9秒9、9秒8となれば周りの人にも、もっと『自分だってできる』と思ってもらえると思うんです」

 17年6月の日本選手権で6位に敗れたのを最後に、日本人選手には1年半近く負けていない。来季に9秒台突入、そして東京五輪表彰台の青写真を描いている。その先、10年後、さらに20年後。山県亮太が切り開く道は、未来の日本人9秒台スプリンターの道標となるだろう。

 「10秒00で走るにはこうしたら良い、というのが僕を答えとするならば出ているわけですよ。僕は伊東浩司さん、朝原(宣治)さん、末続(慎吾)さん、もっと言えば(アジア記録保持者の)蘇炳添選手(中国)の走りを見て、経験や時間を使って技術を蓄積してきたけど、これから出てくる人は僕の走りをパッと見ただけで、僕の経験を一気に飛び越えていく。必ず記録は抜かれるし、9秒台に入る選手は間違いなく増えるでしょう」

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最終更新:11/24(土) 12:13
スポーツ報知

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