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資産の形成から活用へ~超高齢社会の「資産取り崩し」を考える

11/25(日) 19:45配信

LIMO

「資産の取り崩し」も金融サービス

今年2月16日に「高齢社会対策大綱」が閣議決定されました。1996年以降4回目となる同大綱の資産運用面では、昨年11月の金融庁「金融行政方針」を反映し、主軸である「資産形成」に加えて、今回初めて「資産の取崩し」にも言及しています。これは極めて重要な変化だと考えています。

2014年のNISA(少額投資非課税制度)導入に始まり、2016年のジュニアNISAの導入、2017年のiDeCo(個人型確定拠出年金)の適用拡大、そして今年1月の「つみたてNISA」スタートと続き、これで日本に居住する全ての人の「資産形成」に関する主な制度が揃ったといえます。

実際、こうした制度が浸透しつつあります。フィデリティ退職・投資教育研究所が実施しているサラリーマン1万人アンケートでは、投資をしない理由として「まとまった資金がない」を上げた人の比率が、2010年の48.4%から2018年には27.8%にまで低下しており、少ない資金でも投資ができることの認識が広がっています(『投資をしない理由が変わってきた!  大きく減ったのは?』参照)。

さらに2018年の調査では、「一般NISA」と比べて「つみたてNISA」の利用者は25-34歳に集中しており、これまで資産運用の“壁”とみてきた資産額500万円を下回る100-500万円の層が相対的に多いことも分かりました。スタートしてわずか3か月で50万口座以上の「つみたてNISA」が開設されたことと考え合わせると、大きな変化といっていいでしょう。

しかし、その効果が出るのは25-34歳が退職する30~40年後なのです。個人金融資産の3分の2を保有する60歳以上のための施策は、「高齢社会対策大綱」に盛り込まれた「資産の取崩し」にこそあるといえます。

NISAを退職世帯等に使いやすく

そのためにNISA(少額投資非課税制度)を、資産を取り崩す「資産活用(Decumulationデキュミュレーション)」世代にも使いやすい制度に改善してはどうでしょうか。

複数あるNISAを一本化し、毎年の拠出額に上限をつけず累計の拠出総額にだけ上限を設ける生涯拠出上限型NISAとし、口座内の資産の入れ替えも認めるようにします。生涯拠出上限はマイナンバーで管理できますし、資産もリスクを下げる構成に変えることができれば、自由度が一気に増して資産形成から資産活用まで途切れなくカバーできる制度になります。

また、英国に最近導入された相続ISAも日本で活用できます。亡くなった方のNISA残高と同額をその配偶者の拠出上限額に1回に限って上乗せできる制度です。相続税法に触れることなく、単にNISAの拠出上限額の一時的な引き上げだけで、夫婦間の資産共有を図る方法ということもできます。平均余命の長い女性にとって老後の生活資金への懸念を少しは緩和できるはずです。

超高齢社会のもと、現在の高齢者の資産活用を適正化させる制度設計を急がなければならないことは異論がないところでしょう。整ってきた既存制度を上手く活用し、「高齢社会対策大綱」の実現につなげたいところです。

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野尻 哲史

最終更新:11/25(日) 19:45
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