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メルカリのアカウント「6万個」作って「ボロ儲け」、どうして摘発されたのか?

11/28(水) 9:46配信

弁護士ドットコム

フリマアプリ「メルカリ」などのアカウントを不正に作成して売ったとして、三重県の男女2人がこのほど、私電磁的記録不正作出・同供用の疑いで、北海道警に逮捕された。

報道によると、2人は今年2月上旬、メルカリなどの規約に違反して、アカウント17個を不正に取得しようとして、携帯電話番号の情報をサーバに記録させた疑いが持たれている。アカウント1個あたり、1000円~1500円で販売していたという。

少なくとも、6万個を不正に作成して、2017年1月から2018年3月までに約8500万円を売り上げていたとみられるという。アカウントは、偽ブランド品の出品などに悪用されていたそうだ。

メルカリの規約では、複数のアカウントを持つことは禁止されているが、ほかのネットサービスでそのような使い方をしている人は少なくない。どんなときに私電磁的記録不正作出にあたるのだろうか。インターネットの法律問題にくわしい松尾雄司弁護士に聞いた。

●メルカリは規約で「複数アカウントの作成」を禁止している

――どんなときに、私電磁的記録不正作出(同供用)にあたるのでしょうか?

私電磁的記録不正作出・同供用罪は、ざっくりとした表現でいうと、コンピュータに本来意図しない動作をさせるデータを不正に作ったり、それを提供したりした場合に成立する罪です。

複数のアカウントを自由に使えるようになると、規約違反で退会処分となった人がアカウントを変えることで同様の行為を繰り返すことが可能となり、メルカリ上で、偽ブランド品などが容易に流通する危険を招くことになります。そのため、メルカリは、規約で複数アカウントの作成を禁止しています。

今回の場合、メルカリの複数アカウント禁止の規約に反して、虚偽の氏名・住所や不正に入手した携帯電話番号を利用してアカウントを作成しているものと思われ、これらの行為等が私電磁的記録不正作出罪にあたるものと考えられます。

――たとえば、SNSやメールなどのウェブサービスで、複数のアカウントを持っている人も少なくありません。この場合も罪に問われるのでしょうか?

ウェブサービスの規約中に、複数アカウントの取得を明確に禁止する条項がない場合には当然ながら問題となりません。

また、仮に規約があっても、実際には厳格に適用されてない、事実上の黙認状態であったりする場合には、「規約違反を運営者が黙認している=複数アカウントの作成が本来意図しない動作とまではいえない」と利用者が受け止める可能性があります。

そのため、運営者の管理状況の程度にもよりますが、コンピュータに本来意図しない動作をさせる目的をもって複数のアカウントを作成したとは言い難く、私電磁的記録不正作出罪にはあたらないとする余地が残ります。

いずれにせよ、利用者の立場からは、ウェブサービスを利用する際、十分に規約に目を通しておくことが大切となります。

●商標権侵害や詐欺の幇助、業務妨害が成立する余地も

――今回のケースは、ほかの罪にあたる可能性はないでしょうか?

販売したアカウントが、偽ブランド品の出品などに悪用されていたという事情をどれくらい把握していたかで、アカウントを販売した行為が、商標権侵害や詐欺の幇助犯にあたる可能性があります。

また、メルカリの規約で禁止されているにもかかわらず、複数アカウントを作成・販売する行為によって、取り締まる側であるメルカリに、特別な対策をとらせるなど、運営業務上の負担をかけた場合には、メルカリの運営業務を妨害したことを理由として、業務妨害罪が成立する余地はあります。

――今回のケースの売上はどうなるのでしょうか?

刑法に定める犯罪行為の報酬等を没収する規定は、基本的には対象が有体物に限られます。そのため、アカウント販売により得た売上が銀行口座に入金されている場合には、刑法の没収の規定は適用されません。

ただし、メルカリの規約では、違法行為への関与が疑われる場合には、売上の支払いを留保することができるものとされています。そのため、規約によって、売上の支払いが留保されたうえ、メルカリが受けた損害の範囲でその賠償に充てられる可能性はあります。

【取材協力弁護士】
松尾 雄司(まつお・ゆうじ)弁護士
京都大学理学部地球物理学教室卒業(研究テーマ「ヨーロッパGPS受信機網データを用いた電離圏トモグラフィ」)。京都大学法科大学院修了。自然豊かな熊野寮において学生時代を過ごす。一般企業法務や知的財産問題の他、インターネット法務や自治体の訴訟法務等に取り組む。
事務所名:弁護士法人港国際法律事務所横浜主事務所
事務所URL:http://minatokokusai.jp/

弁護士ドットコムニュース編集部

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