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「西武ライオンズ、生え抜きの日本人だけで優勝」 後藤西武HD社長

11/28(水) 14:02配信

ニュースソクラ

【ニュースソクラ編集長インタビュー】西武ホールディングス 後藤高志社長に経営を聞く(上)

 西武鉄道とプリンスホテルを傘下に抱える西武ホールディングスが足元の9月中間決算でも過去最高益となるなど、絶好調だ。西武鉄道では沿線価値を高める再開発事業が目白押しで、ホテル事業は海外での買収が相次ぐ。傘下のプロ野球、西武ライオンズはリーグ優勝を果たした。上場廃止という経営危機の直後の2005年にみずほフィナンシャルグループから社長に就任し、再生・立て直しの陣頭に立ってきた後藤高志社長に、経営方針とその哲学を聞いた。

 ――オーナーを務める西武ライオンズはリーグ優勝まで一度も首位を譲らない快走でした。

 シーズン前の識者の予想はよくて3位、たいていがBクラスで優勝予想なんて皆無でした。しかし、今年は球団創設40周年。過去の30周年も20周年も、10周年も優勝していましたから、期すものはありました。キャンプでは「何としても優勝」と激励しました。

 ――打線が強いから、おもしろい試合が多かったですね。

 日経新聞がコラムで、最後にどんでん返しが来る「勧善懲悪ドラマみたい」と書いてくれました。試合が西部劇みたいな展開で、これは本当に「西武」劇だったわけです。

 ――打力のチームはペナントレースにはよくても短期決戦には弱いと言われます。その通りになってしまいましたが。

 先発投手を中継ぎにしてくるような絶大な投手戦力のあるチームには、短期戦では分が悪かったですね。クライマックスシリーズは残念でしたが、10年ぶりのリーグ優勝が得られて、私は個人的には90%は満足しています。あとの10%は来年の楽しみにしています。

 ――ですが有力選手が抜けてしまいそう。10%の夢は実現できますか。

 米国のメジャーに行きたいという菊池雄星投手の希望はつぶせません。止めるのはチームとオーナーのエゴになってしまいます。かれは花巻東高校に居た時から、メジャーでのプレーを夢見ていたのですから。ほかにフリーエージェント(FA)で抜ける選手もでてくるかもしれませんが、これまでも有力選手が抜けると若手がその穴を埋めるように台頭してきています。

 実は、今季のライオンズはレギュラー選手は野手も投手も、みな生え抜きばかりです。

 外国人もトレードで取った選手もいません。裏返していうと、全員ドラフトで取った選手を育てて戦っているのです。結果として日本人ばかりでもあります。こんな球団はほかにはありませんよ。生え抜きをきちんと育てられるのが理想で、ここ数年はそういうチーム作りをしてきました。その結果が、今年の優勝なのです。

 ――観客動員数にも表れましたね。

 そう、年間動員数は176万人で、ここ数年右肩上がりが続いています。優勝を繰り返していた、いわゆる「黄金時代」よりも多いはずです。私が西武に来た2005年のころは球団は営業赤字でした。2006年にライオンズも株式会社だから黒字にしないとダメだと球場で記者たちに話したら翌日のスポーツ紙は一斉に、「後藤社長、ライオンズ売却決断」と書いてきました。黒字になんかなるわけがないというのが、記者たちの常識だったのです。だから翌日には出張からとんぼ返りして記者を集めて「球団は売らない。必ず黒字にしてみせる」と宣言しました。いまは、黒字。孝行息子ですよ。

  ――今年の戦い方を振り返ってよかったと思えることは。

 今年の躍進の兆しは、2月の宮崎県南郷の春季キャンプからありました。私が視察した際、辻監督が「後藤さん、今年は終盤まで負けていてもお客を帰さない野球をしますよ」というのです。彼には逆転力のあるチームを作れる手ごたえがあったのです。

 バッティングだけでなく、走れるチームにも変えていました。盗塁数は12球団でナンバーワン。投と打にはどうしても好・不調の波ができますが、走には波がないと辻監督は言うのです。

 そういう戦術もさすがですが、彼は精神性といいますか、選手を鼓舞できる人です。クライマックスシリーズでソフトバンクに敗れて日本シリーズ進出が絶たれた時、ファンを前に「悔しいです」と絶句して嗚咽したのですが、彼のスピリッツは選手に乗り移っています。来年もいけると思います。

 ――後藤社長の社員に訴えかける姿勢に通じますね。

 2005年に西武に来た時、まじめで実直な人が多いが、挑戦やリスクをとることには臆病というか消極的な人が多い、そんな社風ができてしまっていると感じました。それで2006年に作ったグループビジョンのなかにあるグループ宣言で「誠実であること」、「共に歩むこと」、「挑戦すること」を掲げて13年間やってきました。宣言を書き込んだビジョンブックはいまも肌身離さず持っていまから、ボロボロです。

 ――ともすれば、ビジョンやスローガンは経営者の自己満足にとどまってしまい、社員には浸透しませんが。

 実際の施策と、ビジョンをリンクさせて来ました。グループスローガンは「でかける人を、ほほえむ人へ。」ですが、このほほえむ、スマイルを浸透させるため、駅ナカ店舗はエミオ、賃貸マンションはエミリブ、フィットネスクラブはエミノワ、認可保育所はNicot(にこっと)とネーミングも意識してきました。毎年4月はグループビジョン推進月間とするなどあらゆる行事に組み込んで、浸透を図ってきているのです。

 ――部下に伝わらないと、歯がゆい思いをすることはないのですか。

 いま、西武鉄道では沿線価値の向上を目指し、様々な施策に取り組んでいますが、駅の改修工事等の影響で、お客さまに一時的なご不便をかけざるを得ない状況も生じます。そのような状況を社内で説明する際に、迷惑をかけるお客さまは一日数十人ですからという説明をした社員がいましたので、その場で注意しました。

 長い目で見れば便利にするためのやむを得ない措置なのですが、数十人ぐらいいいじゃないか、と思うのは「でかける人を、ほほえむ人へ。」のスローガンなどグループの理念には反します。その発言をした社員を責めるつもりは毛頭なく、その場にいた社員たちにグループビジョンに対する私の思いを伝えたかった訳です。

 外部の方からは細部に見えることかもしれませんが、ビジョンに抵触することは見逃さずに注意しないと、だんだんに緩んでしまう。社員はトップの立ち居振る舞いをみていますから。ちょっとしたことが、理念を含めたビジョンを浸透させていく上では大切だと考えています。

■聞き手 土屋直也(つちや・なおや) ニュースソクラ編集長
日本経済新聞社でロンドンとニューヨークの特派員を経験。NY時代には2001年9月11日の同時多発テロに遭遇。日本では主にバブル後の金融システム問題を日銀クラブキャップとして担当。バブル崩壊の起点となった1991年の損失補てん問題で「損失補てん先リスト」をスクープし、新聞協会賞を受賞。2014年、日本経済新聞社を退職、ニュースソクラを創設。

最終更新:11/28(水) 14:02
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