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『Weed』でダイバーシティを示した川村かおり、その先見性の背景には何があったのだろうか?

11/28(水) 18:02配信

OKMusic

川村かおりの1stアルバム『ZOO』がリリースされてからちょうど30年目となった11月21日に、その『ZOO』が高音質仕様のUHQCDとして再発された。また、年明けには1989年から1990年にかけてVHSで発表されたビデオクリップ集3タイトルのDVD化が決まっている。没後10年ということもあるのだろう。ここに来て川村かおりにスポットが当たっている。決して風化させてはならないアーティストであるだけに、こういう取り上げられ方は歓迎すべきだろう。当コラムでは彼女の通算4枚目のオリジナルアルバム『Weed』をチョイスしてみた。

ヒット曲のVer違いを1曲目に配置

正直に告白すると、筆者は川村かおりに対して半可通な知識しか持ち合わせていない。彼女のデビュー曲が辻 仁成プロデュースのシングル「ZOO」であること。「翼をください」がヒットしたこと。映画やドラマにも出演していたこと。そして、彼女が乳がんのため若くして他界されたこと。知っていたことと言えばそんな感じで、アルバムを通して聴いたのも今回が初めてだと思う。『ZOO』が再発されたわけで、当然このコラムでも『ZOO』を取り上げると思っていたら、編集部から“いや、やっぱり川村かおりと言えば『Weed』でしょう!?”と言われ、その時に本作の存在を知ったくらいだ。恐縮ながら、まずその点をご理解いただければ幸いである。以下、半可通なりの分析になるであろうが、『Weed』の作品解説から始めてみたい。

オープニングM1は「見つめていたい(アコースティック篇)」。この楽曲は1991年11月に発売された、彼女の通算9枚目のシングル曲である。サビの印象的なメロディーが彼女のややハスキーな声質と合わさって、強さの裏側にある脆さのようなものを感じさせるナンバーである。パッと見て、若干不思議に思ったことが2点ある。ひとつは、シングル曲をなぜ1曲目に配したのかということ。そして、シングルで見せたバンドアレンジではなく、“アコースティック篇”と題されたバージョン違いを収録していることだ。

誰が決めたか分からないが、アルバムのリード曲となるような先行シングルは大体2曲目に置かれることが多い。『Weed』はそうではない。別にそうしなくちゃいけない決まりがあるわけでもないので、それが悪いと言っているわけではなく、例えば、M2「僕を撃て」は軽快なR&Rナンバーなのでこれをオープニングにして、バンドVer.の「見つめていたい」をM2に配置することもできたと思う。1990年代前半の邦楽シーンではシングルを2曲目に置くことがなかったのかと思って調べてみた。そりゃあもちろん全てのアーティストがそうではなかったけれど、わりとやっていた人たちは多かった。そんな中で、「見つめていたい」でオープニングを飾り、しかもそれをリズムレスでアコギとザラっとしたエレキギターをバックに歌う“アコースティック篇”としたことには、彼女なりのメッセージを感じざるを得ない。バンドサウンドにしなかったのは、おそらくメロディーと言葉を強調したかったと想像できる。以下は「見つめていたい」の歌詞である。

《愛がなきゃダメさ 夢がなきゃダメさ/声にできるほど 強く思うんだ だけども/愛だけじゃダメさ 夢だけじゃダメさ/それが悲しくて叫べなくなる僕だよ》《どのレールを僕ら走っていても/欲望や金につられる 魚じゃないよ》《僕のつけた足跡に 誰かが気づけばいいな/そしたらまた友達が 増えてくだろう/大切な僕らの未来 決めるのは僕らの今日/宝物が多すぎて キリがないや/ポケットの砕けたビスケットだって/鳥たちの御馳走にかわるんだよ》(M1「見つめていたい(アコースティック篇)」)。

所謂バブルが崩壊したのは1991年から1993年と言われているが、シングル「見つめていたい」、そしてアルバム『Weed』の発売時期とぴたり一致するのが興味深い。また、バブル経済が崩壊した時期、つまりこの時期においても音楽業界はCDバブルと言われたセールスの絶頂期を迎えており、右肩上がりが続いている時期であったので、そこで、こうした歌詞を綴ったところに彼女のアーティストとしての性根のようなものが感じられる。

さらに、《愛がなきゃダメさ 夢がなきゃダメさ》と言いつつ、《愛だけじゃダメさ 夢だけじゃダメさ》と逡巡している部分は、派手さこそないがやはり強烈なインパクトを残す。この時、彼女はまだ20歳前後。“大事なのは愛と夢!”と言い切っていたとしても文句は出なかったであろう。しかし、自問自答するかのようにこのフレーズをリフレインした彼女は何を考え、何を思っていたのだろうか。

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最終更新:11/28(水) 18:02
OKMusic

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