ここから本文です

写真集の中の「虐待された私」、今も必死に生きている つながる当事者たち

11/29(木) 18:57配信

AFPBB News

【11月29日 AFPBB News】園庭で遊ぶ子どもたちのはしゃぎ声が、静まり返った講堂に響く。3人の大人が語る子どものころの虐待体験に、約80人の聴衆は息をのんで耳を傾けている。11月中旬、東京・大田区の児童養護施設で行われた講演会の一場面だ。

【関連写真(全18枚)】写真家・長谷川美祈さんの「インターナルノートブック」

 3人はいずれも40代。子どものころに親などから虐待を受けた経験を持つ。成長した今も、当時の経験や記憶に苦しめられている点で共通している。写真家の長谷川美祈(Miki Hasegawa)さん(45)が児童虐待に焦点を当てた写真集「インターナルノートブック(Internal Notebook)」を通じて知り合い、この場に集まった。

 写真集のタイトルに込められているのは、「心の叫び」だ。養護施設に入所している子どもと職員の間で交わされた交換日記「インターノートブック」をもじっており、表紙もその日記から使った。また、成長してからの周囲に理解されない苦しみを日記や殴り書きのメモに残している人も多く、貴重な役割を果たしている日記の役割も重ねている。

 全184ページ。「ダミーブック」と呼ばれる手作り本の表現方法で、各ページをのりで貼り合わせ、背を糸でかがっている。読み進む覚悟のある人だけがページをめくればいいように、両開きの写真ページの中にそれぞれのエピソードが記されている。

■虐待の傷は時とともに癒えない

 写真集は昨年11月に完成し、制作したのは66冊だけ。児童憲章が1951年に定められてから66年が経過したことに合わせた。

「児童は、人として尊ばれる。/児童は、社会の一員として重んぜられる。/児童は、よい環境のなかで育てられる。」

 母子手帳に記載されている児童憲章の理念を、改めて社会に問いかけたい。その思いから数字にこだわった。

 写真集の前半には、過去約30年の間に起きた子どもの虐待死事件9件を、現場写真や裁判の記録、死亡した児童が書き残した言葉などを収載。後半は、大人になった当事者8人のポートレートを中心に、幼いころのアルバムや気持ちをつづったメモなどの写真のほか、長谷川さんによる撮影対象者へのインタビューを含む。後半に多くのページが割かれ、虐待から生き延びたはずの子ども時代が、大人になった今もなお続いていることを感じさせる。

 児童養護施設で行われた講演会に集まった3人も、今も当時の記憶に苦しむ当事者だ。幼少期から実母の激しい暴力にさらされ、成人後も心理的に支配されてきたというサクラさん(44)、幼い弟を実父からの暴力で亡くした橋本隆生さん(40)、実母が次々と男性を迎え入れる家庭で養父から暴力と性的虐待を受けたヤマダカナンさん(41)だ。

1/5ページ

最終更新:11/30(金) 16:19
AFPBB News

あなたにおすすめの記事