ここから本文です

【大槻ケンヂミステリ文庫 インタビュー】鬼才・大槻ケンヂが放つオカルトから見える人間のリアル

11/29(木) 10:02配信

OKMusic

大槻ケンヂが少年時代に愛読していた早川ポケットミステリ文庫の名を取ったという通称“オケミス”こと大槻ケンヂミステリ文庫。音も歌詞も“やりたいこと”を詰め込んだソロプロジェクトのライヴレコーディングアルバム『アウトサイダー・アート』には、純度120パーセントのオーケン節が炸裂している。

大槻ケンヂミステリ文庫 インタビューのその他の写真

──『アウトサイダー・アート』はファンキーかつジャジーでブルージーで、ポエトリーリーディングがふんだんに盛り込まれていて。オケミスはHR/HMな筋肉少女帯とかなり聴き心地が違いますね。

まぁ、歌ものも多いんですけど、ずっとやってみたかったんですよね。かまやつひろしさんの「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」とか、セルジュ・ゲンスブールみたいな感じを。セルフカバーで収録してる「企画物AVの女」(2000年に発表した特撮の2ndアルバム『ヌイグルマー』に収録)みたいに過去にも試みてる曲はあるんだけど、やっぱりお客さんはパンクやラウドロックの出だから、そっち系を求めるんだよね。でも、そろそろお客様もこういう横ノリが響く頃じゃないかなぁと。頃合いを見て時は来た!と。

──なるほど。筋肉少女帯は完全なる縦ノリですもんね。

いや、実はファンキーなのもあるんですけどね。筋肉少女帯は80年代後半のバンドブームから出てきてますけど、当時の日本の若者は速い8ビートしか得意じゃなかったんです。でも、僕は昔からゆったりした横ノリ系が好きで、ジェームス・ブラウンみたいなパキッとしたのじゃなくて、もっとゆったりしたファンキー。あと、ライヴでもお客さんが座ったままでも楽しめる音楽もやりたくて、ゆくゆくはブルーノートとかビルボードでもやりたいですね。オケミスならディナーショーにも対応できるだろうし、いやマジで。あと、いろいろ形態を変えて東名阪以外のところにも行けるユニットにしたいということで、1月のツアーも東名阪と岡山からです。で、このツアーから早速、椅子ありです。世代的にはここ重要。早目にチケットを取ればおそらく座れるかと思いますが。

──ありがたいです(笑)。そんなアンニュイなサウンドに歌詞はオカルティックな世界観が全開というのが、また大槻さんらしいというか。

ミステリアスですよね。ずっと歌詞にしたいと思っていたものですね。オカルト、謎、ミステリな事件の裏から見えてくる人間模様というか、ミステリから見える人のリアル。人間は生きていく上での抑圧をいろんなかたちにして封じ込めたり、拡散してきたわけですよ。例えば聖書だったり、お伽話だったり。そうですね、日常って日常でないことがあまりに多いから、それを妖怪やUFOに例えることで、人はかろうじて納得しようとするんですよね。人生の抑圧を物語化して自分の中で落としどころを見つけるという。

──それを歌っているのが幕開けの「探偵はBARにいてGHOSTはブレインにいる」で、2曲目の「退行催眠の夢」に進んだ時にドキッとしたんですよ。私も退行催眠に興味はあるんですが、その心理を見透かされたような気がして。

あの…結局、人間は自分にとって一番良かったと思える時代に行きたいんですよ。そこからやり直すのはハードだ。だから、戻りたいんじゃなくて、ただそこに、移動したいんですね。昔、「風車男ルリヲ」という曲で《楽しかったあの頃に 君が戻れないのは》 《巨大な風車を グルグルと回すルリヲがいるから》と歌いましたけど、それですよね。自分の求める一番良い空間と時間を人間は“今”に求めなきゃいけないし、みんな“今が一番だ”って言うけど、それはそうであるべきと自己洗脳してるだけ。本当は過去の思い出から一番良かったと思える状態を検索して、そこに移動したい、行きたい逃げたいでもできない…っていうもどかしさの中で、人間は老いて死んでゆくんですね。今回そんなことを歌った気がします。

──リード曲の「ぽえむ」でも同じことを歌っていますよね。穏やかなバラードですが《心が 私に あったなら》と呟くラストが衝撃で、実はこの曲がもっともオカルトなんじゃないかと。

人間、みんな他人の気持ちが分からないって嘆くけど、そもそも心はどこにあるのかっていう問題があるじゃないですか。心なんてものはないっていう発想もあるし、もっと言うと“人間とは何か?”っていうこと。心なのか肉体なのか、「スポンティニアス・コンバッション」で歌ってるように、“靴だけ残して消えた人は人じゃないのか? じゃあ、心だけ残っていたら人間なのか?”っていう答えの出ようがない観念的なことですよね。まぁ、退行催眠とか人工発火現象の歌とかとんでもない曲ばかりですけど、歌っていることは顕在意識の下にある集団的無意識…全人類が同じように抱えている想いにアクセスしていると思うので、どなたでも必ず共感できるロマンスがあると思う。

──そういった大槻さん自身の精神世界とゆったりしたサウンドが意外なほどマッチしていて。プロジェクト名や由来のポケミスを踏襲したジャケットも併せ、本当にやりたいことを詰め込んだ作品なんだなと感じました。

今回実に好き勝手にやらせてもらったってことですね。作曲をお願いした高橋 竜さんとオワリカラも本当に素晴らしかったですよ。デモテープの段階で全曲いい曲だ!と思って、これはすごく珍しいことです。コラボがはまったってやつですね。

──「ぽえむ」の艶やかなヴォーカルとか、大槻さんの歌声の魅力を存分に味わえるのもファンには嬉しいです。

昔、『サーカス団パノラマ島へ帰る』(筋肉少女帯で1990年2月発表の4thアルバム)の頃かな。叫ぶ曲しかなかったので、ちょっとメロディーを入れたら“映画俳優の歌みたいだね”って言われて。確かに俳優さんのアルバムって歌が特別に上手いわけじゃないんだけど、語りとキャラで聴かせちゃうのってあるじゃないですか。あっ、思い出した! 『スタートレック』のカーク船長をやってたウィリアム・シャトナーがそういうアルバムを出していて、ちょっとファンキーなビートに乗せて、歌うように囁いてるっていう。それを聴いて“これだ!”と思ったんです。そう、カーク船長もやりたかったんだよなぁ。

──大槻さん自身、シンガーの範疇を超えた俳優的要素がありますよね。カラオケで選曲しても絶対に上手く歌えません。

歌えないですよ! 誰も大槻ケンヂのように大槻ケンヂの歌は歌えません。僕以外には。だから、歌うまコンテストにその部門も出てきてほしいんだよなぁ。規格外の歌を歌う人が出てくる部門。「元祖高木ブー伝説」とか「日本印度化計画」を上手く歌える人、見てみたいですよね(笑)。いないから絶対。

取材:清水素子

OKMusic編集部

最終更新:11/29(木) 10:02
OKMusic

あなたにおすすめの記事