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【平成家族】子どもへの「お弁当作り」は愛情の証し? こども園で、SNSで「つらい」と吐露しても……

12/2(日) 14:00配信

朝日新聞デジタル

見つけた「パターン」

 それならと、息子の意見を聞きつつ、月曜日はおにぎり3個、火曜日はおにぎりとおかず……と「パターン」を決めることに。

 「おにぎりは息子の希望で、足りない時は学食でフライドチキンやポテトを買うそう。おかずを持たせる日は鶏のからあげ、ブロッコリー、プチトマト。たまに卵焼きやポテトサラダ、前日のおかずの残りです」

 それでも、日々の弁当作りは苦痛だ。SNSにはキャラ弁やカラフルに彩った弁当の写真がいっぱいで、「弁当がつらい」と悲鳴をあげている自分は、「母親失格」と言われそうな気がする。

 だが、息子は親子で話し合った弁当を毎日残さずに食べ、健康にしている。反抗期も落ち着いて、夕飯の食卓では、あれこれ話をするようになった。自分もよく寝て、健康に働き続けたい。

愛情表現としての弁当、高度成長期に

 弁当を作ることが、家族への愛情の物差しのように言われるのはなぜか。他人の食卓をのぞくことはないが、弁当はひとつの器に収まって、周囲と見比べることもできる。これがやっかいのもとになってきた。

 弁当と愛情をたどっていくと、戦後の高度成長期、サラリーマン世帯とともに急増した専業主婦層に突き当たる。

 「夫は外で会社のために働き、妻は家で家族のために働くという分業のライフスタイルが、右肩上がりの時代に台頭しました」と栗山直子・追手門学院大学准教授(家族社会学)は話す。

 外の仕事では効率を上げることが善になるが、家の仕事の弁当づくりでは逆。日本人に、集団の中で規律を守って行動することを目的化する傾向が見られることとの関連も栗山さんは指摘する。

 「家での女性は、家事をこなすという同じ集団に属して、子どものためには手をかけて弁当を作るのが『当たり前』になりました」

 メディアには、弁当を作る母親が幸せな存在として登場して、プラスの価値観が共有される。反対に、弁当に冷凍食品を使うと減点になる。「現実の子どもは、テレビCMの冷凍食品を食べてみたかったり、反抗期で愛情を見せつけられるのが嫌だったり。目的が空回りしているかもしれないのに」

 高度成長期に生まれた世代が60代、その子どもが30代となった。平成になって30年のいまも愛情弁当論は再生産されていると栗山さんは見ている。

連載「平成家族」

 この記事は朝日新聞社とYahoo!ニュースの共同企画による連載記事です。家族のあり方が多様に広がる中、新しい価値観とこれまでの価値観の狭間にある現実を描く「平成家族」。今回は「食」をテーマに、12月1日から連日公開しています。

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