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大山名人が反対…容易ではなかった「竜王戦」創設 勝負師たちの系譜

12/3(月) 16:56配信

夕刊フジ

 【勝負師たちの系譜】竜王戦

 竜王戦は、名人戦と並び、一位の棋戦を作るということで発足した。しかしその成立までは容易ではなかった。

 将棋連盟側の大御所、大山康晴15世名人が反対したからである。

 大山は名人戦を主催していた、毎日新聞社の嘱託だったが、新聞社の代弁ではない。一人の棋士だけが潤う棋戦は作るべきではない、という持論があったからだ。

 私は将棋会館に住み込んでいた少年時代、大山が経理部で「とりあえず100万円ほど都合しといて」と言っていたのを聞いたことがある。当時はA級の月給(固定給)が10万円前後だったから驚いたが、それがどういうことか分からなかった。

 後で大山は、自分の優勝賞金をすぐにもらわず、連盟の運転資金に置いておいたことを知った。当時竜王戦のような大きな賞金の棋戦があれば、自分が独り占めだったということもあろうが、強い棋士ほど連盟全体のことを考えねば、という気持ちが反対させたのだと思う。

 しかし大型棋戦の発足が将棋界全体の発展につながるという、将棋連盟理事らの説得に納得し、承知したのだった。

 今期竜王戦は昨年と同じ、東京渋谷・セルリアンタワー内の能楽堂で始まった。

 昨年同様、対局は一部公開され、ファンの方用に特別観戦プログラムが売り出された。

 これは2年前、竜王戦が京都・天龍寺で行われた際、京都ホテルオークラでの解説会とは別に、お寺の対局場に入って、初手や封じ手を見る、棋士との昼食会、特別指導対局を受けられるファンを募集したのが始まりだった。

 今回も前夜祭出席から始まる、フル参加の竜王コース以下、さまざまなコースに多くのファンが応募した。

 第1局は羽生善治竜王が勝ち、次の福岡県・福津市「宮地嶽神社」と羽生が連勝し、防衛に大きく近づいたと思えたのだが、第3局の茨城県「鹿島神宮」、次の京都府「福知山城」を挑戦者の広瀬章人八段が連勝して返し、残りは改めて三番勝負を戦うこととなった。

 このところの対局場は、神社やお城などが多いのが特徴で、地元の自治体がタイトル戦を、街の宣伝、街おこしに使っていただけるのはありがたいことである。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

最終更新:12/3(月) 16:56
夕刊フジ

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