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人は病を得た時に患者になるのではない

12/4(火) 11:10配信

BuzzFeed Japan

人は、生きていれば誰しもが病気にかかります。そして時にはがんのような、命に関わるような大きな病気にも。

では、人はどのときから「患者」になるのでしょうか。

その病気が体に巣食ったとき?

病気によって何か症状がでてきたとき?

それとも医者に「あなたはがんです」と診断されたときでしょうか。

私たち医師が、病院で出会う患者たちは、みな「患者」です。少なくとも私たちはそういった見方をしています。そして、病院に通っている方々も、そのほとんどは「患者」として通院しているでしょう。

ただ、この関係性は時に、患者という役割を着せられた個々人から生きる力を奪ってしまっているのではないかと感じることがあります。
【寄稿:西智弘・緩和ケア医、腫瘍内科医】

病院で生きる力を失っていったAさんの物語

Aさんは、70代の女性。若いころから居酒屋を切り盛りしてきた女将さんで、人を笑わすのが大好きな方だったそうです。家の近くにある広い畑で収穫された野菜をお店で出し、その料理の味と人柄に惹かれて、多くの方が店の常連として通っていました。

「私は、タタミ500畳分の畑を持っているんだ」

それが彼女の自慢でした。

常連客は「この都心部で、そんなに広い土地を持っているわけないだろう」

と思いながらも、彼女なりのホラ話なのだろうと大いに笑っていました。

歳を取ってからは、店を開く回数は減ってきていたものの、自慢の畑には毎日通い、野菜の世話をしていたそうです。

夫を早くに亡くし、息子さんを一人で育て、息子さんが独立してからも一人暮らしで頑張ってきたAさん。しかし最近、どうにも無理がきかなくなり、久しぶりに近くの診療所へ行ってみることにしました。

その診療所での血液検査で、極度の貧血を指摘されたAさん。すぐに大きな病院へ行くようにと指示され、精密検査の結果、かなり進行した胃がんと診断されたのです。

診察に同行した息子さんは、「久しぶりに母に会ってみたら、こんなにやせてしまっていて…。早く入院させて、母を元気にしてください!」と、担当医に迫りました。

医師も、「では、追加の検査もありますので入院にしましょうか」

とAさんへ告げます。

Aさんは、「畑の世話ができなくなるじゃないか」と、最初は拒否していましたが、息子さんの説得もあり最終的には入院を承諾したのでした。

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最終更新:12/4(火) 11:10
BuzzFeed Japan

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