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【平成家族】「一家だんらん中心のCMは幻想」、社内の声で気づいた担当者 これまでの食卓像、一新したイオン

2018/12/5(水) 14:02配信

朝日新聞デジタル

 専業主婦が料理を作り、家族みんなで夕食を囲む「サザエさん」のような一家だんらん風景。スーパーの品ぞろえも、テレビCMも、そんな一家だんらんを前提に考える時代が長く続きました。ところが平成になってまもない1992(平成4)年には専業主婦と共働きの世帯数が初めて逆転し、世の中のニーズは、手間をかけてつくる料理よりも、忙しいなかで短時間で準備できる総菜や冷凍食品へと急速にシフト。大手のスーパーやコンビニエンスストアの担当者も近年、「だんらん」だけではない食卓のかたちを意識した発信を模索しています。(朝日新聞記者・長橋亮文)

【動画】「ファミリーを追いかければいい」幻想から一新、社内の声から生まれた「夜市」CM

「脱だんらん」CM、人事畑女性が仕掛け人

 流通大手イオンリテールは平日の午後4~8時でも総菜や生鮮食品の品ぞろえを充実させる「夜市」の新CMをこの夏から始めました。

 仕事帰りの母親が娘の手を引いて、メンチカツを手に取る。家で食卓に並べれば娘も夫もにっこり笑顔。仕事を終えてイオンに立ち寄り、レンジでチンするだけのカレーを買って自宅で食べるサラリーマンなども描かれています。

 このCMを仕掛けたのは、マーケティング部の長真樹子さん(39)。人事畑を長く歩んできて、今後も人事のキャリアを希望していましたが、「新たな風を吹かせて違った視点から変えてほしい」と今年3月、上司にCM戦略などを担うマーケティング部への異動を告げられました。

 「人材育成や人事のキャリアで学んできたことをいかせるのか不安でしたが、新しい環境で挑戦してみようという気持ちが大きかった」と長さんは振り返ります。

「家族だんらんの食卓は幻想」

 長さんにとって、イオンのCMで強く印象に残っていたのは「20日、30日、5%オフ」といった「安さ」を訴えるもの。そのうえで、「自社のプライベートブランドの品質の良さやコンセプトをもっと伝えたらいいのに……」と思いをめぐらせていました。イオンの食を中心としたブランドを一から見直し、CMでの発信方法を変えてみることにしました。

 それまでのCMは一家だんらんの様子が中心でした。「ファミリーを追いかければいい」(広報)という考え方で、長さんにも最初は違和感はありませんでした。

 異動から1カ月後、社内の働く女性や育児に携わる男性、独身女性などが集まってプロジェクトが立ち上がりました。そこで聞いた社員たちの声は、長さんにとって意外なものでした。

 「家族だんらんの食卓は幻想。押しつけがましく感じられる」

 「がんばっているのに、もっとがんばれというのか」

 なかには一家だんらんのシーンを好意的に見ていたメンバーもいましたが、イオンがそれまで想定していた家族像は幻想だと気づきました。「人々のライフスタイルの多様化が前から進んでいるのに、それに対応したCMを打てていませんでした」

 長さんの周りだけでも、独身で外食やコンビニ弁当を頼りにする友人や、専業主婦で子ども3人と夫で食卓を囲む友人など、さまざまな食卓のかたちがあります。高齢の夫婦は、単身赴任の男性は……。イオンのCMには多様なライフスタイルを送る人々が登場します。

 「いろいろな登場人物を出して、その人にあった食を提案しています」と、長さんは話します。

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最終更新:2018/12/5(水) 14:18
朝日新聞デジタル

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