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急増する「退職代行サービス」。料金や“引き継ぎレス”問題を叩く前に考えたいこと

12/5(水) 12:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

ある月初めの月曜の朝、始業開始時間の9時ちょうどに、某行政関連団体の経理課長、鈴木芳子(仮名)さんのデスク電話が鳴った。

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“「そちらに勤めている山田健一さん(仮名)から依頼を受けて、代わりに連絡させていただきました。山田さんは『これ以上そちらに出社することができない』とおっしゃられています。退職の手続きを進めていただきたいので、人事部門にお電話をつないでいただけますでしょうか」”

自分たちの知らないところでハラスメントでも……

ご存知だろうか。最近急激に増加し、テレビの報道番組などでも特集が相次いでいる「退職代行サービス」からの電話だ。鈴木課長に、電話を受けた時の感想を聞いた。

“「びっくりしました。退職代行というサービスがあることはネットニュースなどで知っていたのですが、いわゆるブラック企業のパワハラ上司を相手に退職手続きを代行するのだとばかり思っていたので。自分で言うのもなんですが、仕事量も少なく、のんびりしたこの職場でなぜ、と最初は思いました」”

退職を申し出た山田さんは中途入社して半年、26歳の経理担当者。大人しく、周囲との関係は濃くはなかったものの、ことさら孤立していたわけでもなかった。職場の同僚たちも、突然の退職代行サービスからの連絡に、「なぜだろう」「何か自分たちの知らないところでハラスメントでもあったのではないか」などとさまざまな憶測を飛び交わせた。

だが、鈴木さんが山田さんの机のカギを開けた途端、すべてが明らかになった。引き出しから、明日までに処理しなければいけない膨大な量の経理伝票が見つかったのだ。

“「これでは自分の口で退職など申し出られるはずがない……」”

同僚たちはため息とともに、二度と山田さんが職場に顔を出さないだろうことを察した。同時に、山田さんが溜めに溜めた仕事を処理するため、しばらくは泊まりがけの残業も避けられないことを覚悟したのだった……。

強固な引き留めで退職できないケースが続出

退職代行サービスは、退職を希望する人が3~5万円程度の費用を支払うことで、会社への退職の申し出を代行してもらうサービスだ。「今すぐ辞めたい」「苦痛から解放」「退職成功率100%」といった痛烈な売り文句が並ぶサイトから、メールやLINEで簡単に申し込みできる。

近年は未曽有の求人難により、どの職場も後任の採用が難しいため、退職の申し出があるたび必死の引き留めが行われる。強固な引き留めのあまり、転職先が決まっていたのに退職できないケースや、上司がのらりくらりはぐらかして退職届が受理されないケースもある。たとえ退職届が受理されたとしても、転職先の入社日前日まで残務処理に追われ、疲労しきった状態で新たな職場に出社するケースも少なくない。

3~5万円で、このような前の職場とのやり取りや、モチベーションを失った仕事の処理から解放されるなら安いと判断する人も少なくないだろう。しっかり休み、エネルギーを新しい職場に向ける方が良いと考えるのもある意味合理的だ。

だが退職代行サービスは、強固な引き留めから解放するだけでなく、冒頭の山田さんのような「逃亡型の退職」を支えることにもなる。

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最終更新:12/5(水) 16:06
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