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米国株急落 「逆イールド」発生で景気後退懸念が現実味?

12/5(水) 13:15配信

THE PAGE

 米国ニューヨーク株式市場が4日、前日から一転して反落し、ダウ平均株価は約800ドル下落しました。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは、今回の米株急落の背景に、気になる現象の発生があると指摘します。藤代氏の寄稿です。

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米国の「長短金利の利回り」が逆転

 4日の米国株は急落。背景には人々が景気後退を意識せざるを得ない状況に陥ってしまったことがあると考えられます。

 それは米国金利の「長短金利の利回り逆転」です。通常、金利は期間が長いほど高くなるのですが、将来の景気拡大期待が弱まった時などは、長期ゾーンの金利がより顕著に低下する傾向があることから、その結果として長短金利差が逆転することがあります。これを逆イールドと呼び、過去の景気後退局面では、その1~2年前に逆イールドが発生していたことから「景気後退の予兆」として広く認識されています。

 3日の米国債市場では、2年金利と5年金利で逆イールドが発生しました。2年金利は政策金利(=翌日物金利、FF金利、短期金利)の見通しを素直に反映する傾向があり、5年金利はそこに中期的な景気・物価の動向などの要素が加わり決定されます。したがって、何らかの理由で景気回復期待が萎んだ場合、5年金利の方が大きく低下する傾向が指摘できます(ただし例外多数)。今回2年金利と5年金利で逆イールドが発生したのは、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ継続で2年金利が上昇傾向にある中で、将来の景気回復期待が薄れ5年金利が低下した、という文脈で説明が可能と思われます。

 筆者は従前より「イールドカーブのどこかで逆イールドが発生すれば、それが人々の景気後退懸念を喚起することで実際の景気後退の引き金になる」との懸念を示していましたが、そうしたシナリオが現実味を帯びてきてしまいました。4日の米国株急落は「逆イールド発生→株式強制アンダーウェイト」といったプログラミングによって売り注文が急速に膨らんだ面があったにせよ、「逆イールド発生→株価下落」を目の当たりにして、人々が実際に景気後退を意識し始めたのは事実でしょう。

 そもそも逆イールドが景気後退に結び付くというセオリーは、長短金利差縮小(逆転)に伴い銀行の貸出利ザヤが縮小することから、銀行が貸出を抑制し、それが倒産や失業を生むことで景気後退を招くとされています。しかしながら、銀行貸出態度(融資姿勢)と長短金利差の関係は不明確でその理論的根拠は薄いことから、長短金利差の縮小・逆転それ自体はさほど重要ではないと考えられます。

 とはいえ人々に景気後退を意識させるという意味において「逆イールド」は重要視すべき事象です。理論的根拠はともかく、人々が景気後退を意識することで、実際の景気後退につながってしまう可能性があります。

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※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

最終更新:12/5(水) 13:17
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