ここから本文です

AIが視覚障害者の“目”に 画像認識デバイス「Orcam My Eye」で普通のメガネが進化

2018/12/6(木) 8:00配信

ITmedia NEWS

 近年、高齢者や障害者など、何かしらの不自由を抱える人々の課題を解決するテクノロジーが増えている。脚の不自由な人の体に装着して歩行を手伝うパワードスーツや、スマートフォンアプリと連携するスマート車椅子など、日々進化が目まぐるしい。

AIが「目」になる

 イスラエルのベンチャー企業Orcam Technologies(オーカムテクノロジーズ)は、視覚障害者向けに画像認識技術を活用した新しいデバイス「OrCam My Eye」などを開発。これは、手持ちのメガネの柄の部分にデバイスを装着し、読みたいテキストを指でさし示すと、デバイスがその画像を瞬時に読み取り、音声で読み上げるというもの。世界30カ国20言語に対応して販売し、海外では英BBCなど大手メディアが取り上げるなど、広く注目を集めている。

開発したのは「デジタル時代の目」の先駆者

 Orcam Technologies発祥の地イスラエルに、どんなイメージを持つだろうか。イスラエルでは近年、AI(人工知能)、IoT、自動運転、サイバーセキュリティなどの分野において、米国をもしのぐ勢いの「技術大国」あるいは「スタートアップ大国」に成長している。

 同社は2010年にイスラエル・エルサレムで設立された。社内には、画像処理技術などを扱うコンピュータビジョンや機械学習の専門家・技術者、視力が弱い視覚障害者を含む顧客サポートスタッフなどがいるという。

 共同創立者の1人であるジブ・アヴィラム(Ziv Aviram)CEOは、カメラに映る情報を解析し、警告音を発して事故を防止する自動運転技術を開発したMobileye(モービルアイ)の共同創立者でもある。米インテルは17年に同社を153億ドル(当時約1兆7000億円)で買収し、同年に三菱ふそう、日野自動車がこの技術を導入している。

 OrCam My Eyeは、この画像認識技術を活用したAIデバイスだ。

指をさした対象を音声で読み上げる

 OrCam My eyeは15年に米国で先だって登場、17年にバージョンアップしたOrcam My Eye 2.0が発売された。Orcam My Eye 2.0は紙面に印刷された文字を音声に変換してユーザーに聞かせてくれるウェアラブルデバイスである。1300万画素の超小型カメラを内蔵し、ユーザーが指さす内容を即座に画像認識技術で読み取り、音声で内容を伝えてくれるという仕組みだ。

 磁石で普段使い慣れているメガネやサングラスのつるに装着できるのも大きな利点。重さはわずか約22.5グラムで、サイズは100円ライターほどで持ち運びもしやすい。ケーブルはなく、必要がないときはメガネから簡単に外せる。

 外出時には、駅や町の案内板を読み上げてくれる。読み上げる音声を途中で止めたいときは、目の前に手をかざし「ストップ」を示すジェスチャーをすると止まる。また、テキストを指でさす他に、デバイスの側面をトントンとたたくと写真を撮り、対象物を音声で読み上げる。デバイスをやさしくなでると、なでる方向によって巻き戻しや早送りも可能としている。

 バーコードスキャニング機能も興味深い。スーパーマーケットなどの店頭で何かの商品を視界に入れれば、それが何であるかを音声で教えてもらえる。市場に出回っている製品のバーコードをデータベースに保存しているため、保存されている製品なら新たに自分でバーコードを読ませる必要はない。

 色の識別も可能だ。例えばブラウスを手に持って指をさすと、色を音声で知らせてくれる。米国版は紙幣を識別する機能も搭載する。米国紙幣を視界に入れると「5dollars」(5ドル)と読み上げるのだ。

 家族や友人、同僚など、いつも会う人を登録できる識別機能も搭載した。事前にOrcam My eyeで対象者の写真を撮り、名前と共に保存しておくと、対象者が視界に入ったときにその人物の名前を音声で教えてくれる。100人まで登録可能。

 画像認識から音声発話まで全てデバイス内で処理されるため、スマートフォンやWi-Fiと接続する必要もなく手軽である(ソフトウェアアップデートのためにWi-Fiは搭載)。

 Orcam My Eye 2.0の参考価格は4500ドル(約60万円)。人間識別機能がない、読書のためだけのデバイス「My reader 2.0」は3500ドル。

1/2ページ

最終更新:2018/12/6(木) 8:00
ITmedia NEWS

あなたにおすすめの記事