ここから本文です

ノーベル賞本庶氏創設の基金に若手基礎研究者らが期待

12/6(木) 21:37配信

産経新聞

 本庶佑・京都大特別教授(76)のノーベル賞受賞決定とともに注目を集めたのが、賞金の使い道だ。基礎研究の重要性を訴える本庶さんの意向で、京都大は今月、賞金を原資に若手研究者の支援を行う「本庶佑有志基金」を創設した。研究費低迷や人材流出で日本の科学技術研究の基盤が揺らぎつつあるなか、未来のノーベル賞候補誕生の後押しとなるか。(有年由貴子)

 「日本では若い人への支援が細っている。安定的に、自由に研究できる機会を作りたい」。5日、授賞式への出発前に会見した本庶さんは、基金が果たす役割への意欲を語った。

 科学の原理原則を探究し、自然科学研究の土台ともいえる基礎研究だが、この分野の若手研究者を取り巻く環境は厳しい。

 「最終的に人にどう役に立つのか、社会に還元できるかを明確にしないと研究資金が調達できない」。神戸大の足立直子助教(39)=細胞シグナル伝達学=はこう話す。

 基礎研究者を志して生物学を学び、31歳で常勤ポストの助教に就いた。現在は3つの研究テーマを持つが、研究費申請の際には、成果がわかりやすい医学系の研究を前面に出す。「実は一般受けしないテーマにおもしろい研究の種が多々あるが、それでは資金は取れない」と、基礎研究が進みにくい現状を明かす。

 足立さんが取り組む生命科学系の基礎研究は試薬購入や実験動物の飼育にも高額な資金が必要で、一定規模以上の研究費は不可欠だ。「若手研究者は研究室に所属し、教授らの意向の下に研究せざるを得ない。独立し、アイデアをもとに研究を進めるのは難しい」と指摘する。

 基礎研究の成果は短期間で実用化に結びつきにくいため、問題の解明・解決につながる応用研究に予算が割り振られる傾向にある。

 さらに、平成16年度以降、国立大学が自由に使える「運営費交付金」は1400億円以上減額する一方、基礎研究を支えるもう一つの支援策「科学研修費助成事業」の増額幅は450億円程度。こうした状況を背景に、日本の学術論文の発表数は減少傾向にある。

 博士号取得後の博士研究員(ポスドク)は、大学で3~5年の「任期付き」研究員として雇われる。最近は助教や准教授のポストでも任期付きが増え、「大学で研究を続けられる人は一握り」(若手研究者)。短い任期内で確実に結果を出すことが求められ、研究の小粒化が進む。

 本庶基金は、賞金のほか、研究成果を基に実用化されたがん治療薬の特許料も充て、1千億円規模を目指している。

 本庶研究室の仲島由佳研究員は「先輩方の後に続けるような、独創的な研究に挑戦できる機会になりそう」と期待する。大阪市立大の藤原正澄(まさずみ)講師(37)=ナノ光学=は「国の施策とは異なる独自の視点で若手をサポートしていくことが大事だ」と語る。

 本庶さんは「他大学でも(基金が)作られ、それが互いに刺激になってよい方向に働けば」と期待を寄せている。

最終更新:12/6(木) 21:37
産経新聞

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ