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氷上の新格闘技?!初上陸レッドブル・クラッシュドアイス横浜大会でメダルを狙う36歳“レジェンド”山本純子の決意

2018/12/6(木) 11:00配信

THE PAGE

 2015年から女子も公式競技となった。北米、欧州を転戦して年間に3、4試合。今季は3試合が予定されている。山本はこれまで15レースに出場してきたが、最高順位は2017年のオタワ大会での4位。2日間ある大会は、初日にタイムトライアルの予選があり上位16人が翌日の決勝へ進む。本戦では4人ずつのグループに分けられ、上位2人が、次へ進む勝ち抜き方式で準々決勝、準決勝、決勝と3試合が行われるが、山本は、最初のベスト16の壁が長らく破れなかった。

 世界のトップ選手の多くは、アイスホッケー出身だが、中には、フィギュアスケートのペアでバンクーバー五輪に出場した美人ライダーや、ショートトラックでバンクーバー、ソチと2大会連続で五輪出場している異色の転身組もいる。

「トップ選手は、経験、スタミナ、フィジカル、技術、ハートのすべてが揃っている。ここ5年間、ベスト5はほぼ変わらないんです。強い選手は攻める。怪我スレスレまで行けちゃう。しかも、練習からそれをやる。でも、私は最初から安全に完走することだけを考えてブレーキをかけるタイプでした。ベスト16位に入れば、翌年の出場権を得れるということもあって守りに入っていたんです。怪我はしないが、予選でベスト10内のタイムが出るのに本番では負けるんです」

 転機があった。それが唯一ファイナルに残った一昨年のオタワ大会である。
 アスリートには覚醒の瞬間がある。
 実は、その前の大会となるセントポール大会で、こんな出来事に遭遇した。
 前年度の世界王者で優勝候補だったジャクリーン・レジェール(カナダ)が、ウェーブと呼ばれるセクションで背中を強打して倒れた。すぐさまレスキュー隊がかけつけたが、それを拒否してヨロヨロになりながらゴールしたという。アスリートテントにあるモニターでその様子を見ていた山本は、ショックを受け、自分へ問いかけた。

「自分とは全然違うじゃん。優勝候補なのに、ここまで自分を追い詰めて戦う。なのに私は守りに入ってこけないことばかり考えている。何やってんだろう」

 次のオタワ大会では勇気を振り絞った。予選では、スタートが怖くて恐怖心がとれず、事実、転倒もしたが、最後まで攻めた。転倒を恐れぬ勇気ある滑りは山本をファイナルのスタートラインに立たせた。

 昨シーズンは、その成功体験を胸に続けて「攻める! 勝負する!」をテーマにした。
 だが、「自分の持っている力以上に攻めてしまった」、結果、転倒が増え、レースで追いかける展開に終始する形となり、最高がベスト8。一度もファイナル進出は果たせず、自己ベストの「4位」を上回ることもできなかった。
「勇気」と「無謀」――。その紙一重の狭間でもがき苦しんだ末の失敗だった。

 このオフは、自分の限界値を上げたという自負がある。36歳だが、「体力は落ちたとは思わない。逆に新しく身につける技術のボリュームの方が多い。経験を重ねれば重ねるほど引き出しが増えてくる」とカラカラと笑う。
 山本は横浜での開幕戦の目標を「自信をもって自分の最大限を出す。目標はメダルです」と口にした。
 彼女のニックネームは、北海道方面では「クレージージュンコ」らしい。「クレージーな競技にチャレンジしている」ことからテレビの番組で命名された。
 本当に氷上のクレージーになることができればメダルは見えてくる。

 クラッシュドアイスは3年前に国際連盟の「ATSX」を立ち上げ競技としての五輪種目入りを目指している。IOC(国際オリンピック委員会)が大会視察に訪れたこともあり、そのムーブメントも高まっている。
「ひとつの夢としてあります。五輪競技になれば、認知度が広がり、スポーツとしてできることも増える。私個人としては、アイスクロスの楽しさを広げていきたい。若い選手に刺激をもらいながら一緒に盛り上げていければいいですね」
 山本には先駆者としての使命と夢がある。
 今大会には「軽井沢フェアリーズ」の後輩になる22歳の若手の佐藤つば冴もデビューする。

「レースは40秒から長くて1分で終わる。スピードに乗って無我夢中。何も考えられない、でも歓声だけが聞こえてくる。その一瞬の感覚が楽しくて面白いんです」
 ベイブリッジの見える横浜で自らの限界を超えてみせる。
 横浜で遅咲きのヒロイン誕生となるか。

(文責・本郷陽一/スポーツタイムズ通信社)

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最終更新:2018/12/7(金) 18:57
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