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予定外の熱血指導10分超…ハム・栗山監督が野球少年に伝えたかったこと

12/7(金) 9:00配信

スポニチアネックス

 プロ野球界でオフの期間でもある12月と1月は学校訪問やトークショーを取材する機会が多い。今月1日、日本ハムの栗山英樹監督(57)が9月6日に発生した北海道胆振東部地震で被害が大きかった厚真町、安平町、むかわ町を訪問。担当記者として同行し、最後に足を運んだ鵡川中央小学校で珍しい光景を見た。

 体育館で行われた交流会の中盤に質疑応答の時間が設けられた。「(ドラフト1位の)吉田投手は何がすごいですか?」や「清宮選手に何を教えたいですか?」など無邪気な質問に優しい笑顔で丁寧に答えていた栗山監督。だが、うつむきがちな少年から「僕はなかなかボールにバットが当たりません。どうやったら打てるようになりますか?」と質問され表情が一変した。関係者にバットを持って来させると、その少年を体育館の奥に連れて行き、熱血指導がスタート。数分後には「ごめん、誰か(この場を)つないでおいて」とマイクも手放してしまった。

 予想外の展開に司会者もたじたじ。慌てて同行した球団職員がマイクを握って質問を受け付けたが、児童らも「2人」の様子が気になって仕方がない。最初は戸惑いの表情を浮かべていた少年も栗山監督の真剣な表情に圧倒され、必死の形相でスイングを繰り返す。ざわついていた児童や保護者も静まり、しばらくスイング音が体育館に響いた。イベントの時間は限られている。「しっかり練習すること」や「ご飯を食べて体を鍛えること」など簡単なアドバイスで済ませることもできた。しかし栗山監督は、それをしなかった。指導時間は10分以上に及んだ。

 北海道は地震で大きな傷を負った。目に見える被害はもちろん、未来の担い手である子どもたちが感じた恐怖、混乱の記憶は簡単には癒えない。イベント終了後、栗山監督は少年への熱血指導について多くを語らず「その瞬間、どれだけ一生懸命になれるかは、自分たちチームにも必要なことだから」とだけ言った。

 すっかり日が落ちて氷点下の気温の中、帰りの栗山監督を「出待ち」する人物がいた。「さっきはありがとうございました」。指導を受けた少年だった。その表情は、明るく、輝いていた。栗山監督は思わず少年を抱きしめ「頑張ろうな。俺も頑張るから」と言った。辛いことがあっても、本気で取り組めば必ず未来は輝く―。そんなメッセージは、被災地の子どもたちに伝わったはずだ。(記者コラム・山田忠範)

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