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家族が、自分が、がんになったとき。ネットに危険な「罠」が待つ

12/7(金) 9:01配信

BuzzFeed Japan

本庶佑さんのノーベル賞受賞で、インターネット上の関心が高まった「免疫療法」という言葉。これを、複雑な想いで見つめる人たちがいる。

その一人が、石森恵美さん。8年前、夫の茂利さんを膵臓がんで亡くした。当時を振り返り、恵美さんは「冷静におろかな判断をしてしまった」と話す。

恵美さんの「判断」を惑わせたのが、ネットの医療情報だ。そのとき、彼女と彼女の家族に、何が起きていたのか。

BuzzFeed Japan Medicalによる恵美さんへの取材から、今もなお、高額“治療”を売り込む広告が並ぶネットとの付き合い方を考える。【BuzzFeed Japan Medical / 朽木誠一郎】

「冷静におろかな判断」の真意

恵美さんは茂利さんにがんが告知された日の夜、自宅で一人、ネットで「すい臓がん 末期」などの言葉を検索した。

当時、すい臓がんには2種類の抗がん剤しかなく、1種類ずつ使っていく治療方針が決まっていた。「他にもっとできることはないか」と懸命だった。

そうした情報収集を続け、最終的に辿り着いたのは、現在は国立がんセンターも注意喚起をする、効果の証明されていない自由診療の「免疫療法」だった。

3回の“治療”に治療に300万円をかけたが、効果はみられなかった。茂利さんは途中で体調が悪化、亡くなった。闘病は半年にも満たなかった。

「今となっては、あれが効果のないものだったことがわかります」と恵美さん。だから、「おろかな判断だったと思います」。

しかし、恵美さんはこのような“治療”を選択したときも、あくまで「冷静だった」という。

「治る可能性がとても低いことは理解していました。でも、万に一つでも、自分の夫には効くかもしれない」

「今、やれることを全部やっておかないと、後悔する。そう考えて、当時としては納得の上で、踏み切ることにしたんです」

ネットの情報が「罠」になるとき

恵美さんは当時、ラジオ局のアナウンサー。健康系の番組を担当していたこともあり、がんという病気についての知識はあった。

「でも、根拠なく“うちは大丈夫”と思っていて。夫ががんになって初めて、誰でもなり得るものなのだと実感しました」

茂利さんは生来、健康でめったに風邪をひくこともなかった。初めての入院が2010年5月。末期のすい臓がんという告知を受けたのは、その3日後だった。

激変する環境の中で、必死に情報を探した。当時、ネットの検索結果には「免疫療法」や、アガリクス・フコイダンなど代替療法ばかりが表示されたという。

「そこで初めて、がんという病気や、その治療についての情報が、ネットに溢れていることに気づいたんです」

「もしかしたらそれまでにも、目にしていたのかもしれません。でも、意識することはありませんでした」

他人事であるうちは、いくらネット上に怪しい医療情報があっても、実害はない。しかし、今は2人に1人ががんになるとされる時代だ。

「みんな“自分には関係ない”と思ってしまいますよね。でも、家族に、自分に、それは起きることなんです」

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最終更新:12/7(金) 9:01
BuzzFeed Japan

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