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【宮城発】南三陸・志津川湾、ラムサール条約湿地に 自然と共生、世界のモデルへ

12/9(日) 7:55配信

産経新聞

 宮城県南三陸町の志津川湾が10月、国際的に重要な湿地の保全を目指すラムサール条約湿地に新たに登録された。東北では初の海域での登録となり、海藻が繁茂する藻場(もば)としては国内初。東日本大震災で大きな被害を受けた同町は復興の途上にあるが、志津川湾の価値が国際的に認められたことで、今後のまちづくりにも期待が膨らむ。(石崎慶一)

 登録された南三陸町の志津川湾は県北東部に位置し、面積は5793ヘクタール。寒流と暖流の影響を受け、冷たい海に生息する海藻と暖かい海に見られる海藻が共存する。ラムサール条約湿地には海域も含まれ、「海藻の藻場」として貴重であるとして、環境省は平成22年9月に志津川湾を「ラムサール条約湿地潜在候補地」に選定した。

 ◆震災で動きは中断

 ところが翌23年3月の震災で同町が被災したことから、登録に向けた動きは中断。震災から5年後の28年に同町は本格的な活動を再開し、住民説明会や機運を醸成するシンポジウムを開催するなどしてきた。

 志津川湾では約200種類の海草・海藻類が確認され、500種類以上の海洋生物の餌場や生息地となるなど豊かな生態系が形成されている。また海草や海藻を餌とする国の天然記念物コクガンの越冬地ともなっている。コクガンは絶滅危惧種で、世界中の8千羽ほどのうち100~200羽が志津川湾で冬を過ごす。こうしたことなどが評価され、登録が実現した。

 同町では震災前から、町の施設「自然環境活用センター」(ネイチャーセンター)を拠点に地域の自然環境の調査・研究が行われてきた。ネイチャーセンターは震災で被災したが、31年度の復旧に向けて準備が進む。「ネイチャーセンターが調査・研究してきた科学的なデータの積み重ねが背景にあり、潜在候補地に選ばれた。各方面の研究者が町に集まってきたが、地元の漁業者が調査に協力し、科学的なデータを蓄積できた」と、登録に向けて活動してきた同町ネイチャーセンター準備室研究員の阿部拓三さん(44)は説明する。

 ◆価値再認識する契機

 登録は住民が地元の志津川湾の価値を再認識する契機となる。ネイチャーセンターの再興を支援する「南三陸ネイチャーセンター友の会」の鈴木卓也会長(47)は「湾の恵みをいかに持続可能な形で保全し利用していくかについて考え、行動する意識づけがなされる」と意義を強調。「民間ならではのフットワークの軽さを生かし、交流や人材育成などの分野で貢献していきたい」としている。

 同町は海の生物多様性だけでなく、町の面積の8割近くを森林が占めるなど豊かな自然を誇る。震災後、民間で環境面での取り組みが進み、森林とカキ養殖場がそれぞれ国際認証を取得した。また同町は資源循環型の「エコタウン」を目指し、自然と共生するまちづくりを進めている。今回の登録は「こうしたまちづくりを強力に後押しする」と阿部さんは力を込める。

 今回の新たな登録で国内の条約湿地は52カ所となった。東北では仏沼(青森県三沢市)、伊豆沼・内沼(宮城県栗原市、登米市)などに次いで7カ所目。来年2月には全国の条約湿地で活動する子供たちが同町に集まり、湿地の魅力を体験、学習する交流イベント「KODOMOラムサールin南三陸町」が開催される。

 ラムサール条約の普及啓発活動を行っている「ラムサールセンター」(東京)の中村玲子事務局長は「志津川湾は、ある意味で世界の宝となった。その湿地の恵みを守っていくことが地元の国際的な責務となる。将来の世代のために『賢く』使いながら守っていけば世界のモデルになるだろう」としている。

最終更新:12/9(日) 11:14
産経新聞

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