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ピンク・フロイドの『狂気』はお宝的名盤!

2018/12/9(日) 18:00配信

OKMusic

OKMusicで好評連載中の『これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!』のアーカイブス。今回ピックアップするのは1973年にリリースされたピンク・フロイドのアルバム『狂気』。全米チャートに570週にわたってランクインするほどの驚異的なロングセラーとなり、日本でも大ヒットしたピンク・フロイドの代表作である。革新的でアーティスティックな作品でありながら、プログレッシブロックというジャンルの枠を超えて、世界中のリスナーに受け入れられ、衝撃を与えた。
※本稿は2014年に掲載

分析不可能な魔力のある音楽

あの時代、ピンク・フロイドの『狂気』はロック好きのマストアイテムで、自分自身もレコードを毎日、取り憑かれたように聴いていた記憶がある。どちらかと言うとシンプルなロックンロールやブルースを好んで聴いていたこともあって、プログレッシブロックのような複雑な展開をする音楽にはあまり食指が動かなかったのだが、宇宙の彼方に連れて行かれるようなトリップ感のあるこのアルバムには「何なんだ、この音楽は!?」とひっくり返るようなショックを受けた。そして、「タイム」のイントロのチャイムの音やシングルカットされて大ヒットを記録した「マネー」のイントロのキャッシャーの作動音などの効果音に毎回、“うわっ”と声をあげそうになるほど驚いてドキドキしていた記憶がある。キャッチーなリフとメロディーが一度聴いたら忘れられない「マネー」が収録されていることによって、このアルバムがメガヒットを記録したという説もあるが、それだけではなく、『狂気』という作品には満月が人の心を狂わせるという説に近い…何か逆らうことができないエネルギーが渦巻いているような気がしてならない。ダウンロード時代の21世紀に初めてこのアルバムを聴く人がどういうふうに受け止めるのかは分からないけれど、心臓の鼓動が鳴り響く1曲目の「(a)SPEAK TO ME(b)生命の息吹」を聴いてしまったら、もう最後まで一気に聴かずにはいられないほどの吸引力のある音楽なのである。

ちなみに『狂気』の原題は“THE DARK SIDE OF THE MOON”で、全ての歌詞を書いているロジャー・ウォーターズのコンセプトは“人間の心の中に潜む狂気や欲望”。ピンク・フロイド初期の中心人物であった美しきヴォーカリスト、シド・バレットがドラッグの影響もあり精神を病んで脱退したことが、このアルバムに影を落としているとも言われているが、当時はそんな知識もないままに、この憂鬱かつ、どこまでも空間が広がっていく感覚に陥るサウンドスケープに心を奪われていた。時代性もあってピンク・フロイドをドラッグミュージック(ドラッグをやっていないと理解できない音楽という意味で)と捉える人もいるかもしれないが、ノンアルコール、ノンドラッグでもイマジネーション次第で脳内の未知の旅ができるのが音楽の可能性であり、魅力なのである。仮にこの作品が当時、実験的という烙印を押されて売れなかったとしても、後に再評価されていたのではないか。それほど、今、聴いても曲順を含めて完全無欠のコンセプトアルバムである。

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最終更新:2018/12/9(日) 18:00
OKMusic

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