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【本庶教授ノーベル賞】スーパー研究者いても、日本の創薬が世界で勝てない本当の理由

2018/12/11(火) 12:10配信

BUSINESS INSIDER JAPAN

2018年12月11日、京都大学の本庶佑先生がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。決定後の記者会見やインタビューで、基礎研究にもっと投資してほしいと繰り返し発言されていたのは、もっともな指摘と思います。いま実際に、創薬のような「出口」がないと、研究のための資金を得るのが難しい現実があるのです。

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大学での研究は、身体の中にこういう仕組みがあって、こんな薬でその機能を抑えれば病気を抑えられる、といった発想の源を提供するのが役割。製薬会社はそうした研究をウォッチしながら、創薬の「ネタ」を探しています。そういう意味で、創薬を担う製薬会社と大学の研究は、不可分一体の関係にあるのです。

“創薬とは……医薬として効果のある新たな化合物をつくるのが「創薬」研究。その後、人に投与して効果を確認する「臨床」研究を経て、国による審査で承認を得られたものが「新薬」になる。”

本庶先生らの研究チームが、がん治療薬「オプジーボ」の開発につながるタンパク質(PD-1)を発見したのは1992年。それが免疫のブレーキ役を果たしていることが分かったのは1999年。およそ7年間、ひたすらタンパク質の作用を見定める純粋な基礎研究を続けたわけです。

そうやって生まれたネタから治療薬の候補が完成し、臨床試験が始まったのは2006年。最初の発見から実用化までに15年です。革新的な創薬はそのように長い試行錯誤を経て生まれるものなのに、いまは(この例で言えば)タンパク質を発見した段階で「創薬につながる可能性があります」と書類に書けないと研究費も下りにくい。短視的な研究しか出てこないのも当然です。

米では研究者が創薬ベンチャーまで立ち上げる

一方、「アカデミア創薬」という言葉があります。字面から何となく分かるように、大学の研究者が自分たちだけで創薬まで行うことを指します。上で書いたように、大学での基礎研究をネタにして新薬の候補となる化合物をつくるのは、ふつうは製薬会社の仕事ですが、それを大学でやってしまおうというわけです。

実は、アメリカではネタを見つけた大学の研究者が、ベンチャー企業をつくってそのまま創薬まで手がけるケースがけっこうあります。仮に失敗して潰れても、ベンチャーキャピタルは投資してくれるし、むしろ失敗体験がある方が投資しやすいと言われるくらいです。ベンチャーから大学での研究に戻るのも、製薬会社を渡り歩くのも、向こうでは当たり前なので、非常にベンチャーをやりやすい。

結果として、アメリカ食品医薬品局(FDA)から迅速承認を得られるような革新的医薬品の半数はバイオベンチャーから生まれています。アカデミア創薬とは厳密に言えば違いますが、とにかく大学の研究者が自ら創薬にも関与することは、アメリカではふつうに行われているのです。

日本ではベンチャーに投じられるリスクマネーはアメリカに比べて圧倒的に少ないし、研究者も失敗して路頭に迷うくらいなら大企業へという人が多い。そのせいもあって、日本の創薬における国際競争力はかなり低く、輸入超過(海外でつくられた医薬品を国内で販売する方が多い)が実態です。

日本の製薬大手の営業利益率は軒並み10%台かそれ以下なのに対し、海外では20、30%は当たり前となっています。

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最終更新:2018/12/11(火) 12:10
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