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放棄地解消へ 東北から九州まで オリーブ適役 観光農園に加工品 街路樹レンタルも

2018/12/13(木) 7:02配信

日本農業新聞

 乾燥に強く、実が軽く収穫しやすいオリーブが、耕作放棄地での栽培品目として全国に広がっている。夏の猛暑で有名な群馬県館林市では、農商連携で放棄地1ヘクタールでの苗栽培に着手した。街路樹にして、緑化で夏の暑さを和らげる試みだ。静岡県沼津市でも、収穫体験ができる観光農園にする計画。北は東北、南は九州まで栽培されているとみられ、地域再生の鍵として、農家や市民の期待が高い。
 
 夏の暑さで知られる群馬県館林市で、1ヘクタールの耕作放棄地でのオリーブ苗の育成が始まった。今春植えた苗木5000本は現在50センチにまで伸びた。栽培するのは、昨年創業した農業生産・加工会社ジャングルデリバリーだ。地元文具店経営者の三田英彦さん(54)が代表を務める。

 三田さんは近隣の稲作農家2人と共に同社を立ち上げた。市内の街路樹を鉢植えにして道路に埋め込む形にし、定期的に交換して季節ごとに多品種を楽しめるようにするレンタル事業に着手した。オリーブは事業の主力商品になる予定で、街路樹を管理する自治体などを対象に取引する。

 「街路樹を増やせば、猛暑時の気温を3度下げることが可能」と三田さん。市内数カ所で同時刻の気温を測ったところ、緑が多い所は市街地に比べて1~3度低いことを確認したという。

 5000本の苗を栽培するために、8戸の高齢農家から放棄地を借りた。同社のオリーブ栽培の話を聞きつけて「うちの土地も使ってほしい」という農家が続々と現れ、今後の予定地も1・5ヘクタール分確保している。栽培を主導するのは同県板倉町の稲作農家、小林信哉さん(61)だ。小林さんは「放棄地は放っておくと植物が伸びて林になってしまう。オリーブへの利用は得策」と評価する。

 同社は、造園業者や住宅メーカーに垣根の材料や庭の樹木として提供することも計画する。三田さんは「数年後に実が収穫できれば、搾油して地元メーカーとの連携で化粧品を開発する。面積も広げ、地域の雇用創出や農福連携の推進にも結び付けたい」と多角的なビジネスを構想する。

 静岡県沼津市では、茶農家3人と地元企業が連携し、耕作放棄地でオリーブを作る。茶葉の価格下落で経営難に陥った生産者が次々と離農し、放棄地が増えるのを見かねた茶農家の栗田恵市さん(61)が、地区の特産品を作ろうとオリーブに着眼。県内でオリーブ生産・加工事業を手掛けるクレアファームなどとの共同出資で17年9月に「クレアファーム駿河湾沼津」を設立した。

 16年5月から浮島地区を中心に市内10カ所全2ヘクタールの放棄地に800本以上のオリーブを植えた。果実はクレアファームのオリーブ製品などに使う。来年からは収穫体験ができる観光農園として、全国の観光客を迎え入れる予定だ。

 栗田さんは「オリーブ収穫と地元農家の作る野菜の収穫体験などを組み合わせて、地域振興につなげる」と意気込む。

全国産地が小豆島結集

 オリーブの主産地、香川県小豆島町は、初の全国オリーブサミットを来年2月に開く予定だ。オリーブ栽培とオイル生産などを振興する1府12県の25自治体が集まり、普及に向けた取り組みや課題を共有する。同町役場オリーブ課は「育てやすく、常緑なので放棄地の景観を再形成する植物としても優れている。把握している限りでは、東北から九州まで栽培が広がっている」と話す。

日本農業新聞

最終更新:2018/12/13(木) 7:02
日本農業新聞

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