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マクロン大統領の苦い教訓 「貧困層の負担だけで世界は救えない」

2018/12/15(土) 11:04配信

The Telegraph

【記者:Ross Clark】
 世界の指導者らがポーランドで気候変動について協議していた3日、3年前に同じ会議が開かれたフランスの首都パリが、デモ隊によって炎に包まれたのは全く皮肉だった。火を付けたのは、エマニュエル・マクロン(Emmanuel Macron)大統領による二酸化炭素(CO2)排出量削減目標達成の取り組みにおいて、不当に扱われた人々だった。

「ジレ・ジョーヌ(黄色いベスト、gilets jaunes)」による抗議活動を擁護しているわけではない。ジレ・ジョーヌ運動は、古くは1789年のフランス革命にまでさかのぼる数々のフランスの行き過ぎた抗議活動の一つといえるが、気候変動の取り組みで貧困層を犠牲にする各国政府に対する戒めともいえる。一般の人々が二酸化炭素排出量削減の代償を負わされる一方で、富裕層は特に影響を受けることもなく、グリーン(再生可能)エネルギーに対する政府の補助金によって利益さえも得ているという状況が見えるような場合は特に、デモ隊は黙っていられない。

 マクロン氏はデモの激化を受け、燃料税の引き上げを延期した。だが、燃料税の引き上げをめぐるマクロン氏の対応は、同氏を含む世界の多くの指導者たちの気候変動に対する取り組みのどこが間違っているのかを浮き彫りにした。

 マクロン氏は当初、燃料税の引き上げで生活に影響が出る人々の抗議を無視した。これらの人々は地方に住んでおり、移動手段は化石燃料を動力源とする乗り物に頼るしかないのが現状だ。次にマクロン氏は、環境を汚染する移動手段を使っているとして彼らを非難したが、自身は首脳会議や各国首脳との豪華なディナーに参加するため世界中を飛行機で飛び回り、二酸化炭素を大量に排出していた。その姿はまるで、痛風に苦しみながらも、暴飲暴食をやめられない人のようだ。

 各国首脳は気候変動関連の会議に集まり、世界中の貧困層に支援の手を差し伸べるという内容の共同声明を大喜びで出し、何も対策を取らなければ最も苦しむのは貧困層だと、もっともらしく訴える。だが、デモ隊以外の人々も事実はその逆だということに気付いている――気候変動に対する取り組みは貧困層を犠牲にし、富裕層の懐を肥やす。

 気候変動対策によって開発途上国の低所得層は、燃料費の高騰が引き起こす貧困「燃料貧困」に陥る。さらに、ガソリンやディーゼル車両は割高になり、最終的にこれらの車両は禁止され、寒い家で身を寄せ合って過ごすしかなくなる。英ガス・電力市場局(Ofgem)によると、環境及び社会政策による課税の影響で、今年は燃料費が10%近く上昇しているという。

 一方、富裕層にとっては、気候変動は助成金による恩恵を意味する。例えば英国では、米電気自動車(EV)大手テスラ(Tesla)の新車を購入すると、3500ポンド(約50万円)の補助金がもらえる。

 このような不公平な状況は、世界中で起きている。貧困国にとって、二酸化炭素削減目標とは、欧米での産業革命を可能にした安価なエネルギーが奪われることを意味する。経済が伸び悩む中、海面上昇への取り組みなど環境対策は後回しにしてしまう。

 富裕国にとって、二酸化炭素削減目標とは、二酸化炭素の排出権取引など利益の創出を意味する。アル・ゴア(Al Gore)元米副大統領は、世界中でグリーンエネルギーに関する講演を行って財を成すと同時に、自身の投資会社を通じて環境問題から利益を得ている。

 だからといって、気候変動は問題ではなく、対策は必要ないと言いたいのではもちろんない。だが、各国政府は、貧しい者をさらに貧しくし、富める者をさらに裕福にすることのない二酸化炭素排出量削減の仕組みを見つけなければならない。さもないと、ジレ・ジョーヌのような運動が次々と出てくることになる。ジレ・ジョーヌは氷山の一角にすぎず、その氷山は解けることなく残り続けるだろう。【翻訳編集】AFPBB News

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最終更新:2018/12/15(土) 11:04
The Telegraph

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