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土木が原風景となる時(2)世紀の大工事を経て完成した「黒部川第四発電所」

2018/12/15(土) 11:00配信

THE PAGE

 さらに、写真2は竣工直後のアーチダムを直上から撮影したもので、華麗な曲面構造(上流側にハングオーバーしたアーチ形状となる)を見せている。このアーチ形状が、上流側(水圧側)に凸に迫出していることにも着目いただきたい。やがて湛水し膨大な水圧が作用するが、それをこの迫出したコンクリートアーチが支えるもので、“アーチダム”の本領発揮である。かくも華麗なアーチ形状は、構造力学に裏打ちされた薄肉シェル構造として完成した。平成期のベテラン技術者が見ても感嘆の声を上げ、そして往時の技術陣にリスペクトの念を抱くのである。

 さて、この巨大アーチダムに通じる工事用の大町トンネル(現関電トンネル)は建設中、地下水を大量に含む軟弱な地層の破砕帯に遭遇し、難工事となった。当時の技術陣の奮闘により工事は完成。黒部ダムが竣工した翌年の1964年(昭和39年)8月からは、この関電トンネルで無軌条電車(トロリーバス)が運行を開始し、多くの観光客に親しまれてきた。なお、トロリーバスは開業から54年後の本年がラストランとなり、来年から電気バスにその仕事を引き継ぐ。

 そして、お目当ての黒部ダムを訪れた観光客は 、時に観光放水を楽しみ、国内最大規模の威容をカメラに収める(写真3)。言わば、インフラツーリズム(土木観光学)の先駆けでもある。

 自然との過酷な戦いを克服した黒部川第四発電所は、関西の地に安定的に電力を供給し、一方では、原風景と化したアーチダムが、我が国屈指の観光地として多くの来訪者を出迎える。

■施設データ:黒部川第四発電所
・河川:黒部川水系黒部川(富山県立山町)
・ダム形式:アーチ式コンクリートダム
・完成年:1963年(昭和38年)
・諸元:堤高186メートル、堤頂長492メートル、堤体積158万立方メートル

著者プロフィール
吉川弘道(よしかわひろみち)1975年早稲田大学理工学部卒。工学博士(東京大学)、技術士(建設部門)。米コロラド大学客員教授、東京都市大学教授を経て、現在、東京都市大学名誉教授。専門は、耐震設計、地震リスク。土木学会論文賞など多くの受賞歴がある。現在、インフラツーリズム推進会議議長を務めるほか、投稿サイト「土木ウォッチング」やFacebookページ「Discover Doboku」を主宰。著書は「鉄筋コンクリート構造物の耐震設計と地震リスク解析」(丸善)など7冊を上梓。

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最終更新:2/23(土) 15:40
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